しんじつ ページ3
.
夜久side
「…そ、そんな器用なこと出来るわけないじゃないですかぁ！違いますよ！」
「リエーフ、今はお前には聞いてない」
「…」
「…否定しないってことは図星だな」
黒尾がそう言って、呆れたように息を吐く。
…やっぱりお前も知ってるよな。
ちゃんと閉まった部室の扉。
その向こうから、誰かの走る足音と声が聞こえてくる。
"おいバカその格好で走んなってば！"
"すぐそこだから大丈夫だし！"
「…野球部のグラウンド近いからよくヒットの音とか聞こえるだろ。それに、この部室棟は昔からある建物だ。防音壁じゃない。扉がちゃんと閉まってても、走ったり、大声で喋ってれば足音や会話が聞こえる。今みたいにな。
昨日もそうだった。部室の外で、Aが『手を掴むな、引っ張るな』って言ってる声と、リエーフがAに「行きましょう」って言ってる声が、大きかったからハッキリ聞こえた。
足音も近くなってきて、黒尾とリエーフの白いエナメルバッグの肩掛けのところが扉の向こうに見えたのが分かった。あの瞬間、俺はAだけじゃなくて、3人とも部室に入ろうとしてるんだ、って思って…そんで、そう考えた刹那に望月に引っ張られた」
「…」
「お前も聞こえてたし、3人が部室に入ってくるかもって思ってただろ。望月、」
俺達の視線が、望月に集まる。
…冷たい心の中の、僅かな隙間。
女の子にこんな圧をかけるように聞き出すのはやっぱりおかしいんじゃないかって、良心が芽生えそうなくらい望月は俯いて。
「…っ、知らない…！わたし、みんなが入ってくる、なんて思わなくて…わたしだって、驚い、て…！
…柳井先、輩の、タイミングが悪かっ、ただけ、です…！」
「…お前、」
そのなけなしの良心さえも、芽生えてすぐ踏み潰されて。
冷たさを超えて湧き上がる"怒り"が、身体を支配しそうになった時。
「どこが？俺が見た限りは、お前は1ミリも動揺してなかったけどな」
「…黒尾、」
「夜久がお前を押し退けて咄嗟にAを追っかけていっても、動揺するどころか笑って立ち上がってたじゃん」
「…は？」
「…っ、そんなの、先輩が見た、だけで…確証ない、じゃないですか…！」
黒尾が助け舟を出してくれたけど、どこまでも交わらない言い争いが加速する。
＿＿その時、バンッとテーブルを叩く音がした。
「…望月、いい加減にしなよ。これ以上はもうやめて」
「…リエーフ、」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 579人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるか(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます！先ほどパスワード解除しましたので、続きをご覧ください！いつもありがとうございます(*^^*) (11時間前) (
レス) id: 38b6291ab1 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - ちゃんとパスワードについて書かれていたのちゃんと呼んでませんでませんでした。申し訳ございません… (5月16日 13時) (レス) id: 0e8cf60b45 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - いつも見させていただいてます！もう、ドキドキしながら続きを待ってます！パースワード教えてもらうことは可能でしょうか…？ (5月16日 11時) (レス) id: 0e8cf60b45 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ナノハナさん» コメントありがとうございます！私も想像するの楽しいのでどこまでもイチャイチャさせちゃいます笑 カイさんは挟まれても菩薩の心で我慢出来ますが、クロオさんは菩薩心を持ち合わせてないので我慢できません。可哀想な苦労人です(爆笑) (4月29日 1時) (レス) id: 38b6291ab1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - まめさん» こはくちゃんは悪魔だったんですけど、恋に落ちやすい女の子でもあるので夢主のお姉さんみたいな抱擁に心奪われちゃいました笑 好きって言ってもらえて嬉しいです！ありがとうございます！飼い鳥の名前可愛いです…♡ (4月29日 1時) (レス) id: 38b6291ab1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるか
| 作成日時：2024年4月16日 23時
