好物頂上決戦【宮 侑】

"楽しい"をまた。 ページ39

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「榊ちゃん、まだ時間ある？」

「はい、撤収までまだ20分くらい！」

「ちょっと出てくる」





どこに？と聞かれる前に走り出していた。



人の波にぶつかりながら、

たった1人。頭に思い浮かべる人を探す。







「(人1)」

「あ、治、角名りん…！お疲れさま！」

「ん、ありがとお」

「負けちゃったけどね」




優勝するって言ったのにごめん。

いつもより少し震えた声で言われた角名りんの言葉に首を振る。





「あ、ツム探しとお？」

「う、ん…」

「じゃーこれ持ってって」

「え？わっ、」





ぽん、と投げられたのはドリンク。




「さっき、北さんと話し終わったら突然走ってどっか行ったんだよねアイツ。

何も飲まずにいるだろうからコレ持ってってよ」


「…分かった」

「頑張りや、(人1)」

「うん、ありがと」




2人とハイタッチして、また走り出す。





早く、伝えたい。





「(2週間前の私、ビビってたのに…


ああもう、侑のせいだ)」





ふふ、と笑みがこぼれた。


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侑は人気の少ない、ベンチに座っていた。

頭にタオルをかぶって。





私はそっと近づいて、ドリンクを差し出す。

目と目が、合う。







「"おりこうさん"やなかったね、影山くん」

「…嘲笑いに来たんなら、怒るで」

「別にそんなつもりなかったんやけどな」





よっ、と隣に座る。

侑が足を広げているから少し狭い。






「…最後、絶対決まると思ってん、」

「うん」

「あれは、俺の、ベストな選択やったんや、」






ポロリ。

侑の目から涙が落ちる。


ギリ、と下唇を噛む音が聞こえた。







「アホやなあ、本家に叶うはずないんに…何が高校ナンバーワンセッターやホンマ、」

「侑、」

「なあ、優しい慰めの言葉は要らんねん、」





もっと深く傷をつけてくれ、

侑は私の目を見て懇願する。





ホント、




「肝心なとこでアホやなアンタは」

「はあ？」





そっと、侑の手を取る。

イジワルなことばかりするけど、




大きくて、安心する手。





「なん、」

「負けを知ったら、更に強くなれる」

「！」

「良かったな、また"楽しい"を沢山味わえるで」





苦しいも多いから、這いつくばっとる暇ないで？

そう言って、侑の頬をつねる。








「いだだ、」

「ふふ、いつもの仕返しや」








そんで、よお聞くんやで？

私は息を吸った。




大丈夫、言える。









「好きや、侑」

私の1番好きな顔。→←音にのせる想い。

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