好物頂上決戦【宮 侑】

ちゃんと、 ページ34

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侑side





「先部活行ってるからな〜」

「おん。すぐ行くで〜」





またな、と先に部活に行く銀に手を振り、面倒くさい日直の仕事をこなしていく。

前回逃げたら1週間やらされたから←







「よし、やっとおわ、」







〜〜〜♩






「(この音色は…間違いなく、いや…)」




職員室に日誌を届け、荷物を取りにもう一度教室に戻ると、


懐かしいような、でもどこか違うような。



トランペットの、音色。





俺の足はまた、引き寄せられるように選択教室へ。









音が近づくにつれて、

疑問は確信に変わる。






「(とげが、ある。泣いて、いる…)」




音楽のことは何一つ分からないのに、

前とは違う、と分かってしまう。






「(やっぱり)」





教室には、窓の方を見てトランペットを吹く女。





楽譜と思われる紙は床に散乱し、

音を奏でている"肩"が震えている。







分かっている。


この女は、分かって、いる。





自分の脆さを。


上を目指すなかでは、苦しいことのほうが多いことも。






「(大丈夫、ちゃあんと見とるよ、)」








悲しい音を遮るように声をかける。


音が止まる。





目を擦りながら、驚いたように振り向く。







「どうして、」




(人1)の口から出た声は、霞んで、小さくなる。








「言うたやろ、お前の音色ちゃうって」

「あ、んたに…何が分かんの」

「分からんよ。全く。でも、」







「(人1)が影で、必死に努力しとるんを、俺はちゃあんと知っとる」






ほら、と両手をとり、

触れた、人差し指のタコと、右手小指のタコ。

絆創膏がいっぱい貼られている。





「気付いとったん？」

「おん、変な風に箸持つな思うて」

「うわぁ…どこ見てんねや、変態、」

「失礼なやっちゃな！！せっかく人が慰めてやってんのに！」

「いたた」





ぎゅう、と頬をつねる。


あぁ、この感覚。








「(やっぱり、こいつがええ)」






ストンと胸に落ちてきたのは、


知っているのに初めて(・・・・・・・・・・)抱く感情。







愛おしい。






「あつむ、」

「ん？」

「ありがとお、」






けど今日は、泣きたい日やねん。見んといてな。






ぽすりと胸に倒れ込んで、

ぐずぐず、とまた肩を震わす(人1)。







ええよ。







俺はグッと唇を噛み締めて、


(人1)の背中に手を回した。







ちゃんと、ふれた。

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