北信介のおばあちゃん。 ページ38
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「あ、(人1)せんぱい!来てたんですね!」
「おん。実はさきちゃんと約束しててん」
「北くん見たいって言うてたもんな」
「ちょ、さきちゃんッ」
1月。
私はさきちゃんと共に東京に降り立った。
たどり着いた先は、東京体育館。
春高バレーが行われとる場所。
来んでええ、って言われたけど、
どうしても、どうしても、見たくて。
お母さんにお願いして、新幹線とホテルのお金を借りた。
さきちゃんは私が行かないって言うても一人で行くつもりやったらしく、ダメ元で誘ったらあっさりOKもろた。
「まだ試合開始までもうちょい時間あるかな?」
「せやなあ…でも、もう席の確保始まっとるっぽいで」
「ええ、席なくなるかなぁ…」
「なくならんやろ笑」
後輩たちとわかれて、さきちゃんとフロアを歩く。
チラホラと女バレの姿が見えて、
眩しいなあ、羨ましいなあ…と思うた。
もし今でもバレー続けとったら、私も春高の舞台に立てたんやろうか、と。
叶いもしない幻想を、彼女達に被せていた。
「あ、(人1)、あれ稲荷崎の応援団ちゃう?」
「わ、ホンマや…!インハイの時はエライお世話になったなあ…」
「ねえ、あのおじさん角名くんのファンかなぁ…『倫太郎』て書かれたシャツ着とる」
「角名くん幅広い世代に人気なんやなあ…
あ、見て、あっちには『信介頑張れ』って書かれたシャツ着とるおばあちゃんが……ん!?」
私は二度見した。
でも、何も変わらない。
あれが、あの人が、
「北の、おばあちゃん…!」
「え、うそ」
「アッ、」
背の小さいおばあちゃんは、フロアの人の波にのまれて転びそうになった。
おいみんな注意して歩けよ!
私は心の中で叫んで、咄嗟によろめくおばあちゃんに近寄り、身体を支えた。
「大丈夫ですか?」
「ええ。ありがとうなあ…慣れん土地やさかい、戸惑ってしもて…」
「いいえ。あの…急に聞くんですけど。信介くんのおばあちゃんで合うてますか?」
「あら。信ちゃんのこと知っとるの?いつもお世話になっとります…」
「ああぁぁお世話になっとるんはコッチなんで顔あげてください…」
深々とお辞儀をするおばあちゃん。
その手本みたいなお辞儀に、血筋を感じながらもオロオロとしていると、
「ばあちゃん!…と、(人1)…?」
凛とした、北の声が私の名を紡ぐ。
未だに慣れなくて、こそばゆい感じに包まれた。
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ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時