． ページ32
「おい信長、どういうことだ！」
そのとき、教室に伊達くんと上杉くんが戻ってきた。
慌てて信長の手を離す。
伊達くんが信長に詰め寄る。
『ちょちょちょちょ！ちょっと待って！みんなが来てからにしよ？』
今にも殴り合いを始めそうな剣幕の伊達くんと、全く身動きをしない信長の間に体を滑り込ませた。
「蝶野は知ってるの？」
伊達くんの腕を引きながら、上杉くんが言う。
私は黙って首を横に振った。
そのうちに、他のみんなも教室に戻ってきた。
もちろんみやちゃんも。
信長を囲むようにして集まったみんなだけど、信長は一向に口を開かなかった。
「信長、ぜんっぜんわかんねえよ」
痺れを切らした井伊くんが話し出す。
「本当にわかんないよ…！」
「なぜ今更、家康に挑む必要があるのか」
「理解できんぞ、信長」
明智くん、上杉くん、伊達くんが順に続いた。
「信長、訳があるのだろう。戦う訳が。…本当の理由を聞かせてくれと頼んだら、語ってくれるか」
「今は言えぬ」
黒田くんの問いかけでやっと紡がれた信長の言葉に、秀吉くんがため息をついた。
「なんでやねん、俺ら仲間ちゃうんか」
「信長」
「信長くん！」
「…すまない」
信長が立ち上がる。
「すまないってなんやねん…」
教室の出口に向かった信長が、ふと足を止めた。
「言えることは、ただ一つ」
「それは、」
「家康との戦いの先に最後の戦いが待っている。俺はそこまで辿り着かねばならん」
それだけ言うと、信長は教室を後にした。
『最後の、戦い…』
信長は一体何を抱え込んでいるのだろうか。
隣でみやちゃんが立ち上がったけど、私には追いかける気力も起こらなかった。
「信長…」
「行ってやれ」
本多くんの呟きに応えるように、上杉くんが言った。
「おっ、わかった！」
「君じゃない！」
今にも教室を飛び出そうとしていた本多くんを制した上杉くんは、真っ直ぐに私を見ていた。
『私に、出来ること、あるのかな…』
「Aちゃんは隣に居るだけでいいんです」
『…』
みやちゃんにも腕を引っ張られて半ば強制的に立ち上がる。
少し重い足取りで、信長を追いかけた。
─────────────────────────
『やっと見つけた、』
てっきり屋上に行ったと思ったのにそこに信長は居なくて、中庭で何かを焼いているのを見つけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 502人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美優(プロフ) - 有紀さん» 初めまして！コメントありがとうございます☺️私も最近続きを書きたい欲が出てきました！気長にお待ちいただければ嬉しいです！ (4月14日 14時) (
レス) @page31 id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
有紀(プロフ) - 初めまして、このドラマが好きで読ませていただきました。続き楽しみにしてます。 (3月29日 18時) (レス) id: 1322499c70 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - ななさん» お久しぶりです！嬉しいです✨ (3月22日 15時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
なな - TVerで配信開始されたので懐かしくなりまた読みにきちゃいました。 (3月6日 23時) (レス) id: 114e35bcaa (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - らんさん» ありがとうございます！最近は更新できていませんが、読んでくださる方がいると思うと嬉しいです😊 (2023年4月15日 18時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆう | 作成日時：2022年8月30日 10時
