新・信長公記ークラスメイトは戦国武将ー 2

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黒板の字が夏至から小暑に変わった。

ついに、その時がやってきた。


《みなさん、新しい公認旗印が出ました。旗印提出は、特進クラスの徳川家康くん》


「ついに」

「「「家康が動きだしたぞー！」」」


この間の一件があってから、井伊くんたち四人は益々仲良くなったような気がする。

今日だって息がぴったりだ。


「いよいよですね」

「タイムアップ、狙うと」


《家康くんが出した旗印は、こちらです》

《1時間以内に、特進クラスの誰かを倒す》


「特進クラスの誰か？」


電子黒板を一番前で見ていた加藤くんが振り返った。


「つまり、家康のポイントを抜いたこの十二人の中の誰かが狙われるってことくさ」


《待ってろ、ゴミどもが》


「直接対決であり」

「「「最終決戦」」」

『息ぴったりすぎでしょ』


立ち上がって腕を叩いた酒井くんたちに、勝手に口から突っ込みが漏れていった。


「だが、全て我々の作戦通り。旗印を出した家康に失敗は許されない」

「失敗すれば、俺のように旗印戦への権利を失うからな」

「我々は負けても失うものはない」

「まあでも、真っ先に狙われんのは、やっぱ喧嘩が弱え龍造寺か？」

「おいおいおいおい、決めつけんなさ」


ファイティングポーズで酒井くんに向かう龍造寺くん。

話している内容は物騒だけど、みんなの表情は穏やかで、どこかワクワクしているようだった。


「とにかく、この教室に全員で待機しよう」

「誰かが狙われたら、残り全員で阻止をする。必ず勝つぞ、この勝負」


伊達くんを筆頭に、みんなが円になる。


「「「「「おおーし！」」」」」

「もういっちょ」

「「「「「おおーし！！」」」」」

「パワー」

「「「「「パワー！！！」」」」」


クールな顔して何言ってんだ、伊達くんは。

流行ってるからって人の芸とっちゃダメよ？

みんなも大真面目にやってるし。


『ドキドキしてきた…』


いくら喧嘩の強いみんなが結束したって、徳川くんは相当強い。

何せ、3歳で父を…

どうか、みんなが無事に全てを終えられますように。

祈らずにはいられなかった。


「A、」


信長が、合わせた手のひらを優しく包んでくれる。


「安全なところで待っていてもいいんだぞ」

『…ううん、ここにいる』


私にはきっと、見届ける義務があるから。


《それでは制限時間は、1時間》


魔村さんの声に合わせて、みんなが窓際にずらっと一列で並んだ。

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