新・信長公記ークラスメイトは戦国武将ー 2

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いつ息継ぎをしているのかわからないくらいに口が止まらない黒田くんに対して、信長は相変わらずだんまりだった。


「はぁ…大した器だ。いいか？いつ誰が裏切るかわからんのだぞ？俺だってそうだ！全てを疑い、どんな犠牲を払ってでも勝利する覚悟を持て！」

「それでも私は！信じると決めたものは信じたいのです！黒田くんのことも」

『そうだよ！疑ってばっかで手に入れた勝利なんていらない！』

「そういうのを、戯言というのだ！こんなことでは、天下を獲ることなどできん！」


私たちの剣幕に、少し動揺した様子を見せた黒田くんは足音を鳴らして美術室を出ていった。

信長は腕を組んで何も言わなかった。




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黒田くん以外にも裏切り者がいる(黒田くんは本当は違うけど)とわかったことで、特進の生徒たちは少しのことでもお互いを裏切り者だと疑うようになった。

例えば前田くん。

酒井くんが購買で買ってきた焼きそばパンを食べているだけで、「俺の焼きそばパンじゃねえのか？お前裏切り者じゃねえだろうな」といちゃもんをつけているところを目撃した。

酒井くんは「なんでそうなんだよ！」と言っていたけど本当にそうだと思う。

自分の机見てみ？

上に焼きそばパン乗ってるから。


毛利くんは化学の後の休み時間に怒り始めた。

黒板に書かれている化学式「Mo + Uri + Ur → Ag + Iri」をローマ字読みすると“毛利裏切り”になるからと、榊原くんに突っかかっていた。

いやそれ先生が書いたやつ。

お兄さん授業中に睡眠して先生の話聞いてないから見てなかっただけでしょ。


本多くんは突然龍造寺くんの首元を掴んだかと思うと、保健室の前の貼り紙のところまで連れて行った。

“みんな家でも健康に”と手洗いうがいを推奨するポスターだ。

“家”と“康”が入っているから、龍造寺くんが裏切り者だと疑っているらしい。

それに対して龍造寺くんは、“家”と“康”が他の文字で分断されているからむしろ反旗を翻している、と言い返していた。

それはまるで、方広寺鐘銘事件のようだった。

いやいや、何百年前の話よ。


みんな裏切り者を気にしすぎて、クラスの団結はバラバラだ。

これじゃあ徳川くんの思う壺だ、とため息しか出なかった。


その晩、みやちゃんと電話を繋ぎながら、PBB作戦に代わる新しい作戦を考えていた。

みやちゃん曰く“ネオPBB作戦”らしい。

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