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その肆 ページ4

ある日の放課後。

夕陽が沈みゆく帰り道、私と信長は湖に立ち寄っていた。

本人は何も言わないけれど、徳川くんへの宣戦布告とも取れる「天下を獲る」宣言をしてから、随分と悩んでいるようだった。

私も私で、何か助けになりたいと思いつつも、側にいることしかできずに悶々と悩んでいる。

それに、父の死の真相を知った今、徳川くんと顔を合わせることが気まずくてならなかった。

信長にもこのことは言えていないし。


「A、」

『ん?』

「貴様はどう思う」

『天下を獲る、って話?』


その問いかけには答えず、信長は舞い始めた。

徳川くんと父のことはしばらく黙っていよう。

今はそれどころじゃなさそうだしこれ以上信長の心配事を増やしたくない。

ぼーっと舞い踊る信長を見ているうちに、ふと信長のお母さんのことを思い出した。


(争いからは何も生まれない)

(相手を思いやる和の心を持ちなさい)

(手は心を一つにするためにある)


信長が喧嘩をして帰る度にそうやってよく叱っていたのを覚えている。

強く、美しいお母さんだったな。

信長のお母さんだったら、今の信長になんて声をかけるんだろう。


『信長、』


立ち止まった信長の元へ向かい、その手を包み込む。

信長は私の手を握り返すと小さく呟いた。


「和の、心…」

『同じこと考えてたみたいね』


俯く信長の目を覗き込むと、優しい笑みが返ってきた。


『すぐには難しいかもしれないけど、信長なら、きっといつか』


少しは不安を取り除いてあげられただろうか。


「信長くん!」


そのとき、みやちゃんの声がした。

みやちゃんも、信長を心配して来てくれたのだろうか。


「答えは、出ましたか?」

「未だ出ずだ」


旗印戦自体を良く思っていないらしいみやちゃんからすると、特進クラスや、ひいては銀杏高校の行く末まで心配なのだろう。

全ては、亡きお父さんとの約束を果たすため。

争いに参加したがらない信長ならきっと、天下を獲ってみやちゃんが思うような学校に変えてくれると信じている。

私だってそうだ。

信長のことを信じている。

けれど、天下獲りのために悩んだり、傷ついたりする信長は見たくないというのも事実で。

誰にも言えない思いは、そっと胸に仕舞い込んだ。


「A?どうかしたか?」

『ううん、なんでもない……帰ろ!』


気づかれないように、みやちゃんの元まで走った。


『明日の美術、ろくろで壺作るんだって』

「そうなのですか?」

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美優(プロフ) - A?さん» コメントありがとうございます!前田くんと絡めるように頑張ります! (2022年8月26日 10時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
A? - 凄く面白いです前田との絡みが欲しいです (2022年8月25日 15時) (レス) @page35 id: 463b37ca19 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - いつも楽しく拝読しております!秀吉ともっと絡ませてほしいです!!! (2022年8月25日 14時) (レス) @page35 id: a89c13a921 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - すずさん» ありがとうございます! (2022年8月23日 19時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 応援してます!! (2022年8月19日 18時) (レス) @page13 id: c8c40d0f19 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆう | 作成日時:2022年8月10日 0時

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