贈り物を ページ37
「お腹が空いたわ。何か持ってきてちょうだい。」
ある日の午後、Aは自分の部屋で本を読みながら、アドムに命令する。さっき、少し重めの昼食をとったばかりなのに…。と思いアドムは少し呆れる。この前、ドレスを仕立てる際、太ったんじゃない?とお店の人に言われたことを彼女は忘れてしまったのだろうか…?とも彼は思った。
「この前仕立てたドレスが着られなくなるんじゃない?」
少し茶化したように、ニヤニヤわらっていうアドムにAはむっとしながら早く持ってきなさいよ!と言った。アドムは、はいはい。と返事をしながら彼女の部屋をでて厨房に向かった。
一方のAは、彼が出て行ったことを確認し、席を立った。そして、大きな鏡のついたドレッサーの引き出しから長細い箱を取り出した。その箱は綺麗に包装紙でラッピングが施されており、飾りにつけられたらリボンには小さなバラの造花までもがついていた。
その箱をAは彼が紅茶を持って来るときに使ったワゴンに置く。そして、再び何事もなかったかのように読書に戻った。
しばらくしてAの部屋のドアが開き、アドムが沢山の可愛いらしいクッキーが盛りつけられたお皿を片手に入ってくる。
「はい。お待たせしました。」
それから、アドムはワゴンの方に目を向けた。そして、首を傾げながら、何?これ。と言った。Aは少しドキッとする。人に贈り物をするのはこんなにも緊張するのだろうか…。と彼女は思った。
「Aお嬢様。これ、何?」
「たっ……誕生日プレゼントよ。考えてみれば分かるでしょ?」
「あ…………。」
アドムは今日が何の日だったか思い出す。そうか、自分の誕生日じゃん。
貧しい身分の奴にとっては誕生日は特に大事なイベントではなかった。それは、アドムにとっても同じことだった。確かに、今まで女という生き物を手中で転がし尽くしてきた彼にとって贈り物はもらわないなんてことはなかったか。しかし、彼はこの時、心から何かジーンとくる嬉しさを感じていた
「…珍しいな。お嬢様から俺へプレゼントなんて。……去年はなかったのに…。」
「日頃の感謝を込めてよ。」
「…なんか、明日は雪が降りそうだな。」
「何か言った?」
「いえ、何も。」
素っ気ない態度で読書に戻るA。その華奢な後ろ姿をアドムはじっと見つめた。
この時、彼の中にあった隠された感情が静かに大きく芽吹いた。
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もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» 学校はじまると何かと忙しいですからね(´-ω-`)麗華さんも暇なときでいいので見に来てくださいね~♪ (2015年9月7日 17時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» いえいえです(*・ω・*)学校始まっちゃいましたもんね…やだなぁ(笑)第一章完結お疲れ様でした!番外編も第二章も楽しみにしてます♪ (2015年9月5日 23時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございますっ!(っ´ω`c)更新ペースはこれから少し落ちると思いますが、よろしくお願いします。まだまだ序の口ですから、第二章ではもっとドロドロにしていきますよ~(`・ω・´) (2015年9月1日 7時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» 「私が来てない間にかなりお話が進んでいる(;°Д°)」とビックリしました(笑)折角なので最初から読み返してみました♪途中で感動して泣いちゃいました…これからも更新楽しみにしてます^^波乱の第二章に突入だ!((黙r (2015年8月31日 16時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - しゅうさん» 素敵だなんてっ…そんなっ…(*゜д゜*)とっっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2015年8月13日 2時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年5月30日 19時