愛しいと思ふ ページ28
「はじめまして、アーサーと言います。」
そう言って、アーサーは手を差しだし握手をしようとする。そんな様子を見てAはフフフと口元を隠し上品に笑った。
そんな笑う様子ですらももうアーサーは目がはなせなくなっていた。全く、現金な奴だ。先ほどまではあんなに面倒くさがっていたというのに…。と彼自身心の中でつぶやく。
「何がそんなにおかしいのですか?」
「フフフ…。だって私達婚約者ですよ?そんなどこかの企業同士ような挨拶…変よ?」
「それもそうですね。ハハハ。」
「私の名前はAです。さ、アーサー様。どうぞこちらへお座り下さい。アドム、お茶をおだしして。」
「はい、お嬢様。…アーサー様、どうぞこちらへ。」
アドムはアーサーを大きなフカフカのソファーまで案内してから、ワゴンの上においてあるティーセットでお茶を入れる。なれた手つきで、無表情に紅茶を淹れる。紅茶の香りがフワッと彼の鼻をくすぐった。いつもならいい匂いだと感じる香りなのだが、今日はそうは思えなかった。
小さな可愛らしいお菓子と湯気の立つ美味しそうな紅茶を前に婚約者同士である彼らはお話を始めた。
「まさか、Aさんがこんなに美しい方だったなんて…びっくりです。」
「まぁ、冗談がお上手ね。」
アドムはAの後ろに静かに立ちながらその和気あいあいとする二人を眺めた。貴族のお見合いはなんて退屈なんだろう。そう思っていた。
「私も、アーサー様がこんなに素敵な方だとは思いませんでしたわ。」
「そんなことないですよ。趣味は何をするんですか?」
「そうね。読書に刺繍…かしらね?アーサー様は?」
「…ダーツに狩り…。そんなに誇れるような腕までもないですよ。」
たわいもない会話。しかし、誰が見てもこのお見合いはうまく言っているようだった。しばらく話が弾んだ後、思い出したようにAはアドムの方を見た。
「こちらは私に使えている執事のアドムです。」
「僕は、執事のアドムと申します。このような我が儘なお嬢様にこのような縁談…。喜ばしいことです。」
取り敢えずの上辺だけの言葉。こんな縁談喜ばしいはずがねぇだろ。と心の中でぼやいていた。
「一言多いわ。」
不機嫌そうに言う彼女をアーサーは愛おしそうに見つめながら笑った。
「上品そうに見えておてんばなんだな。」
「ちっちがっ…」
「そうなんです。お嬢様、“色々と”手が掛かりまして…」
そういいながら、アドムは微笑した。
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もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» 学校はじまると何かと忙しいですからね(´-ω-`)麗華さんも暇なときでいいので見に来てくださいね~♪ (2015年9月7日 17時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» いえいえです(*・ω・*)学校始まっちゃいましたもんね…やだなぁ(笑)第一章完結お疲れ様でした!番外編も第二章も楽しみにしてます♪ (2015年9月5日 23時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございますっ!(っ´ω`c)更新ペースはこれから少し落ちると思いますが、よろしくお願いします。まだまだ序の口ですから、第二章ではもっとドロドロにしていきますよ~(`・ω・´) (2015年9月1日 7時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» 「私が来てない間にかなりお話が進んでいる(;°Д°)」とビックリしました(笑)折角なので最初から読み返してみました♪途中で感動して泣いちゃいました…これからも更新楽しみにしてます^^波乱の第二章に突入だ!((黙r (2015年8月31日 16時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - しゅうさん» 素敵だなんてっ…そんなっ…(*゜д゜*)とっっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2015年8月13日 2時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年5月30日 19時