滴る愛は床にこぼれて…【名前変換オリジナル】

甘酸っぱいカクテル ページ15

グラス入ったジン・トニックをグイッと飲む。飲み口のよいこの感じと、グラスにトッピングされたライムの爽やかな香りが鼻を刺激し、思ったより酔いはまわってこない。久々の酒だが、こんなにも美味しかったものか…酒の余韻に浸っていると、マスターが口を開く。

「で、聞かせてちょうだい。アドムの坊や。今はどんな甘美な生活を送ってるのかしら？」

別に…。といいながらもジンの影響だろうか？口からはここ二年間のAとの成り行きをペラペラと吐き出していく。全てを話し終わったとき、マスターは相変わらずね。と微笑んだ。アドムはフンッと鼻で笑いながら残りのジン・トニックをすべて飲みきった。

そして、メニューと書かれた紙をとり、次の酒を頼もうとまじまじとそれを見つめた。

「俺が着ていない間にメニューも随分変わったな…」

「そうね…。貴方も変わったんじゃない？」

「俺が？何処が？……………次これ、ジャック・ローズ」

アドムは次の酒、ジャック・ローズを頼む。ジャック・ローズは林檎のブランデーをベースにした甘酸っぱいカクテルだ。薔薇のような赤い綺麗なカクテルを一口飲む。ふわりとりんごの優しい香りがしていい。

「二年前のアンタもえり好みが激しかったけど、前にもまして激しくなった気がするわ。」

「そうか？」

「そうよ。周りを見てご覧なさい。アンタを熱い視線て見つめるメス共を。アンタに言い寄る機会を今か今かと待ってる。なのにアンタは見向きもしない。昔とは違うわ。」

昔とはいえ、たかが二年の話だろう？と突っ込みたい所だが辞めておいた。心の奥底で否定はできない自分がいるとアドムは思っていた。

「よっぽど気に入っているのね…」

「何が？」

「今、仕えているところの令嬢。随分と好いているみたいじゃない？」

その言葉を聞いたアドムは、飲んでいたカクテルを吐き出しそうになり、一気に飲み込んだ。そして、それが原因でむせてせき込む。自分がAお嬢様を好いている？馬鹿馬鹿しい。そんなわけないだろ。と彼は言った。一方のマスターは、だったらいいけど…。と言う言葉を残し他の客の相手をしに行ってしまう。

ゲホゲホとせき込んでいると、後ろから大丈夫ですか？と声をかけられたら。振り向くと、長い黒髪の白いドレスを着た少し清楚な雰囲気の女性がアドムの背中をさすっていた。

彼は心の中で微笑んだ。彼の目は獲物を狙う獣に変わった。

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