冷たい彼 ページ26
ビターン!という痛々しい音とともに私の体は、粗末な作りの床に叩き付けられる。疲れてるときにこんな事が起きてしまうと本当に泣きたくなる。
「痛っ!!」
じんわりと手のひらや膝に鈍い痛みが走って顔を思わずしかめたときだ。すっと倉庫の戸が開いた。薄暗い倉庫に光が差し込む。
「……A?どこに…A、大丈夫!?」
其の人物は、私を見つけると駆け寄ってきた。
「ハク…帰ってきてたの?」
「うん。…Aだけだと今日は大変だろうから。立てる?」
ハクに差し出された手を恐る恐るとる。其の手は、氷のように冷たくて、思わず身震いする。どうしてこんなに冷たいの?其の問いを私は飲み込んだ。ハクの顔は薄暗くてよく見えない。
ハクの手によって起きあがらせてもらう。ハクは、薬草とかかれた木箱を見て指さした。
「これを取ればいいの?」
「あ、うっうん!」
そう言うとハクは足台は使わずに、少しだけ背筋を伸ばして木箱をひょいと簡単に取ってしまった。
それから私とハクは薄暗い倉庫で他の薬草の確認もついでに行った。久々にハクと二人きりという状況下。不思議と変に緊張はしなかった。
けれど、時々触れるハクの手の冷たさに少しだけが気になった。昨日、再会したときは別に冷たくなんか感じなかった。
「ごめんね。疲れてるのに手伝わせて…。」
「うん…。全然…平気…だよ。」
そして、私が倉庫の戸を開けようとしたときだ。
ドサッ
急にハクが後ろから寄りかかってくる。流石の私も吃驚する。が、ハク!?と呼びかける前にドミノ倒しのように私達は転けた。
倉庫の戸の少しだけ開いた光が一筋に彼の顔を照らす。私は振り返り彼を見て大きく目を見開く。
その光に照らされた顔は青白くて、血色が悪く、其の目は虚ろに開いていた。ふと腕の方を見るとうっすらと血が滲んでいる。彼が冷たかった理由がやっと分かる。
「ハク!ハク!!ねぇ!ハク!」
「あ…A……。ごめん。」
そう言いながらフラフラと立ち上がろうとする彼を私は必死に支える。
どうして今まで気づかなかったんだろう…。後悔の念がどっと胸に押し寄せる。
「ハク!休んだ方がいいよ。部屋に戻ろう!…ね?」
「……あ…うん。そうだね…。」
ハクは力なくそう言うと、私に少しだけ体重をかけた。私はハクを支えながら一緒に歩いた。幸い、道中には誰もおらず、大騒ぎにはならなかった。私たちはハクの部屋へ向かった。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時