はなまきたかひろすいっち！【花巻貴大】

12：病院 ページ12

それから3日後。

たかちゃんは目を覚まして、あっけにとられてる俺を見て

「ふふ、変な顔」ってやわらかく笑った。




起きたら一発怒鳴るくらいの勢いで叱ってやろうとか、

なんで俺にいいたくないんだって言ったんだとか、

いろいろ聞こうと思ってたのに。




彼女の笑顔を見たら、それだけで安心しちゃって。

「ほんとよがっだぁ」って2度目の涙を流すだけだった。






彼女が目を覚ましてから、1週間がたつころ。







「貴大君、あのね」



いつも笑顔の君が、珍しく少し暗い顔をしていた。


安心させようと思って、「どうした？」って笑って見せたけど。

彼女の顔は曇って行くばかりだった。







「私のけが、思ったよりひどいみたいでね。それで、頭もうっちゃったみたいで、

　もしかしたら記憶障害とかになっちゃうかもしれなくて、

　おっきい病院に移ることになったの。」




ちょっと遠くなっちゃうけど、そこならいろんな治療ができるし、

はやくなおって、普通の生活が送れるようになるからって。



お金はその分かかっちゃうんだけど、

お父さんもお母さんも賛成してくれてね。




迷惑なのに、「大丈夫さ」って笑顔見せて。

だから、引っ越しすることになって。






そう、ゆっくりと言葉を紡ぐ彼女の背中は、とても小さく見えた。


目を覚ました時のあの笑顔は、そこには存在しなかった。






「早く治るって言ってもね、時間はかかるの、、ッ、

　だから、貴大君とも長い間会えなく、なっちゃう、、ッ、」



しまいには泣き出して、

声を裏返しながら、声を震わせながら。途切れ途切れの言葉を俺に届けていた。






「、、、」





こういうときって、何て言えば笑ってくれるんだろうか。



　

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