【文スト】彼らと私の恋愛観

＊ ページ33

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―――今日一日絶対に太宰さんとは一定以上近付かないようにしよう


資料室で一人、其の上司に頼まれた資料を探し乍決意を固める

そして漸く見つけた目当てのファイル


『……………いじめか』


と、ぼやきたくなる程高い位置に置かれた其れに手を伸ばすも、身長が足りないので届かない



『背高いんだから自分で取りに来てよ、もう』


諦めて脚立を持ってこようと、伸ばしていた手を下ろした時だ

背後から伸びた手が、悠々とファイルを掴んだ




「悪かったね、ご要望通り、自分で取りに来たよ」

『………だ、太宰さん』



先刻一定以上近付かないと決めた対象が、早速一定以上の所迄迫っている事に気付けなかった

距離にして約零糎

約もくそもない、既に背中が彼に触れているのだから


そろりと振り返ると、完全に彼の影の中に収まってしまっている事が判った

そして獲物を前にした獣のような瞳に捉えられて


―――嗚呼、逃げられない


漠然と悟って、彼が持つファイルを奪い取って顔の前でガードした



「ふふ、何其れ？」

『こ、こここのファイルに触れたら感電しますよ』

「Aは平気なの？」

『私は電気ナマズなんです』

「面白い事を云うね」


焦る私に愉しそうな太宰さん

如何して今日に限って誰も資料室に来ないんだ、誰でもいいからこの恐ろしい男から助けてくれ

心の中で南無阿弥陀仏を唱える一歩手前である


そんな私の唯一の盾であるファイルに、事も無げに人差し指を引っ掛けて少しずらした彼


腹立たしい程綺麗なお顔が半分覗いた



「――電気ナマズにキスをしたら、如何なるか気にならない？」

『感電するのでオススメしません』

「そう云われるとしたくなる」

『ちょ、待っ』


いとも簡単にファイルを抜き取られて、ゆっくりと降ってきた彼の唇



「おかしいな、感電しないみたいだけど？」



感電したのは、私の方である



「ふふ、顔、真っ赤だ」


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蜜柑味と林檎色→←唇から感電

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