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「もう良いのか?」
何度かおかわりをしてご馳走様でしたの意味を込めて頭を下げると皿を受け取って近くの机に置いた。
「お前さん…さっきから思っとったが、声が…出んのか?」
食事をしている時も今も一度も声を発さなかった。
聞いてもいいことなのかと遠慮がちに聞くと、少し間が空いた後小さく頷きが返ってきた。
「そうか
字は?」
老人はそれ以上なにも聞くことはなく、ペンと紙を渡してきた。
受け取った少女は年相応の可愛らしい字で、《書ける》と書いて老人に見せた。
「わしの名前はヴォルフ
お前さんは?」
《恋歌》
ヴ「恋歌、か
恋歌はなぜわしの家の前で倒れとったんじゃ?」
ヴォルフの住んでいる場所は街から離れた場所にあり、小さな女の子が衰弱してたどり着くような場所ではない。
《ここにきたのは…》
恋歌はヴォルフにここに来た経緯と今まで起こったことを全て伝えた。
ヴォルフの質問にも答え、かなり過酷な状況でここを頼って来たということがわかった。
聞けば年齢は9歳。
ここに来るきっかけの出来事が起こったのもまだ日が浅い。
女の子であるが寒い中何日も歩いて来たので服も、髪も、肌もぼろぼろ。
ヴ「よく頑張った
目的を果たすまでここにいろ
ただし、人生は常にギブ&テイク
安全な暮らしをお前に与える代わりに、お前は労働力をわしに提供する
言っている意味がわかるな?」
ヴォルフの問いかけに頷き、世話になるという意味も込めて頭を下げた。
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作者名:恋歌 | 作成日時:2021年1月10日 23時