タイムカプセル・パズル 2 ページ9
中学1年のころ、親の仕事の関係で隣の県に住んでいた時の事。
「おっさんたち、俺の学校の後輩になにしてくれてるワケ?」
学校から帰宅中、怖い大人2人に絡まれていたところを通りがかった不良の人が助けてくれたのだ。
背筋の通った立ち姿に華奢な体、それと不釣り合いな喧嘩の強さ。睨まれたら動けなくなってしまうような鋭い眼光。
その不良は当時私が通っていた西山中学の先輩で、『西の狂犬』という二つ名で呼ばれていたことだけは知っていた。
勿論知り合いでもなんでもなかったけれど、私が西山中の制服を着ているからという理由で助けてくれたのだろう。
いとも簡単に大人二人をのしてから、その不良は私に視線をやった。
「…大丈夫?」
射貫くような鋭い眼光に、思わず身体がすくんでしまう。
当時の私には何もかもがキャパオーバーだった。
「わ、わたし1年の宇佐美Aです、助けていただいてありがとうございます!!
でも喧嘩する人苦手です怖いです不良とか無理です目つきも怖いですごめんなさいぃぃぃ!!!」
混乱するあまり本心をぶちまけ、一心不乱にその場を走り去ってしまったのだった。
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もう3年も前の出来事だけど、混乱していたとはいえ助けてくれた人に本名を明かし、挙句正面切って『無理』と言ってしまうあたり当時の私はどうかしていたと思う。
けれどそれ以降『西の狂犬』さんとは一切会うことも関わることもなく、私は中学卒業と同時に隣の県へ引っ越した。
きっとこれからも会うことは一生ないだろう。
そんなことを思い出しながら完成した書類を城山会長の所まで提出しに席を立つ。
「城山会長、できました!」
「ご苦労様、すこし確認するね。」
優しく微笑んで、書類に目を通す会長。
書類に目を通す、伏し目がちな優しい目にまたも胸が高鳴ってしまう。
一通り確認すると、会長は軽く頷きながら私の方を向いてくれた。
「Aさん、完璧だね。
今日はもう遅いから帰って大丈夫だよ。」
「あ、ありがとうございます!!」
会長に褒められた。それだけで今日一日生きていてよかったとさえ思う。会長、万歳。
「あ、でも帰りは気を付けるんだよ。
Aさんまだ引っ越して少しだから知らないだろうけど、〇〇通りの方とか不審者や危ない人が多く出るからね。」
「ありがとうございます!失礼します!」
しかもこうやって帰りの心配までしてくれる。どれだけ紳士なんだろう。
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トトトノト - すごい良い!めっちゃ好きですわ〜。続きを見たいです。あっ、勿論自分のペースでええけど...。 (2020年7月1日 22時) (レス) id: 200aff7742 (このIDを非表示/違反報告)
瀬令瑠菜(プロフ) - 水渚桃華さん» ありがとうございます!イベント内の作品やイベ主様の作品もこれから拝見しますね! (2020年5月24日 16時) (レス) id: 82a09a5d81 (このIDを非表示/違反報告)
水渚桃華 - 読ませていただきました。面白かったです。私が気に入った話は、生徒会長×後輩役員の話です。カッコ良い会長にときめいてしまいました!これからも見にきますので、更新頑張ってください。イベント参加有難うございます。 (2020年5月24日 15時) (レス) id: 3a85905bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬令瑠菜 | 作成日時:2020年5月23日 23時