24話 焦凍くんは ページ24
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「焦凍くん！ごめんね、来る途中でひったくりがあって
その対応で…遅れ、ちゃった…」
もうすぐ一年が終わってしまう今日は焦凍くんとのデートの日だった。
もう何回目なのかは正直分からない、数えてないから。
せっかく事前に服を選んで、髪も少し巻いてセットしてきたのにそれは台無しになった。
だけどひったくり犯を捕まえて、持ち主に返せたのだから髪なんてどうでも…まあ、よくはないけど、いい。
「大変だったな。俺も少し前に来たところだから
気にしなくていい。水、いるか？」
「ほしい…走ってきたから…」
焦凍くんが手に持っていた水が入ったペットボトルを
受け取って、喉を潤す。
「ありがとう、後で焦凍くんの分の水を—————」
「別にいい。回し飲みなんてお互い慣れてんだろ。」
「いやそうじゃなくて、お金とか…」
「もう学生じゃねえんだし気にすんな」
なら、ありがたくお言葉に甘えておこう。
と、一安心しそうになったが全然安心してる場合じゃないことに気づいた。
髪、ここに来るまでにちゃんとセットしてくるの忘れた！やばい、絶対髪の毛ボッサボサだよ私…！
とにかく早くお化粧室に——————
「髪、いつもと違うんだな。」
「これは違うの！走ってきたからいま絶対ボッサボサになってるだけで…！」
「いつも通り綺麗だぞ？その髪もよく似合ってる。
それにいつも通り綺麗で可愛い。」
最初の頃はこの言葉にいちいち赤面していた。
あと、信用していた。
「本当に？」
「本当だ。Aはいつでも綺麗で可愛い。」
「そんなワケないから！
この前A組の皆に会った日に私が寝坊して急いで身支度整えて焦凍くんに身なり確認してもらったら大丈夫って言ってくれたからそのまま行ったら、髪がハネてて皆に笑われたんだから！」
と、ここまで早口で言うとまた喉が渇いてきそうになる。
「あの時はアイツらも"かわいい"って言ってただろ？」
「本心じゃなくて揶揄われてたんだよ！
とにかく、トラブルが発生した後の身なりはちゃんと自分で確認するから」
「俺はいつでも本心を言ってるぞ」
「分かったから、取り敢えずお化粧室に行かせてください」
「…分かった」
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作者名：えむむ
| 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2022年7月19日 19時
