轟くんはビンタされても近づきたい【轟焦凍】 (ページ3)

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3話ページ3

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「なあ、なんか俺のこと避けてねえか」

寮生活が始まって間もない頃、夕食を食べ終わって早いところ部屋に戻ろうとした時に轟くんが私の前をふさいだ。

私は、気まずいということよりも驚いていた。
入学間もないときにビンタされた女に話しかけてきたことに。

なんでこんなことを聞いてくるのか分からない。

私は、轟くんを傷つけた。
轟くんは正しいことを言っていたのに、私がもっと
"個性"を、自分を鍛えられていないだけなのに。

私が、轟くんをぶった。

「避けてないよ」

「じゃあなんで俺たちは一回も話したことがないんだ？」

話したことはある。
私がビンタしたとき。あれが最初だった。

最悪な最初。

嫌だ、もうこれ以上話したくない。

私の愚かさが、醜さが、憎い。

「…私、今日体調悪いから。もう部屋に戻りたいの。」

だから早く、ここから出して。

ここから出してよ。

「そうなのか、悪ぃ。大丈夫か？」

「寝てれば治るから」

スッと轟くんの横を通ってエレベーターのボタンを押す。
運が良かったのかエレベーターは共有スペースの階でとまっていた。

エレベーターに乗って、一人になると、どっと力が抜けた。

「なんで、私、あんなことしたんだろう…」

そうしたら、こんな思いをせずにすんだのに。

あの時の自分を酷く恨んだ。