【忍たま】トリップしたら室町少年になってました。

第43話　井戸 ページ44

「やっと井戸に着いた……」

「長かったですね……」

井戸が見える距離まで近づいてから井戸に着くまで落とし穴に落ちること3回、罠にかかること2回、鳥の糞が落ちてくること2回、バレーボールが飛んでくること1回。
ここまでくると不運だというのも認めたくなる。

「Aくん…よく不運だって言われない？」

「不運なのは善法寺さんなのでは？」

「いや、まあそうなんだけど…僕もこんなに立て続けに不運が起きるなんてなかなか無いから……」

「まあ人からそう言われることはよくありますが私はそうは思ってません」

確かに僕はよく不運だね、と言われる。
遠足の日にはいつも風邪を引くし、家から出れば鳥の糞やら木の実やらが落ちてくる。散歩に出れば犬の糞を踏むし、小学校の修学旅行では熱が出た。
しかし不運だとは思わない。
そういうことは思い込むとプラシーボ効果でさらに悪い方へ行ってしまいそうだからだ。

「不運だとか幸運だとかって、その人の感じ方ひとつで変わるじゃないですか。現に今だって、偶然悪いことが重なって起こったおかげで一体感が生まれたじゃないですか。」

「まあ、確かに……」

「物事には良い面と悪い面、両方あるんです。悪い面に目を瞑れとは言いませんが、悪い面しか見ないというのは少しもったいないと思います。」

「Aくんはいいことを言うね」

「私の持論なんで根拠も何もないですけどね。」

やっと辿り着いた井戸の中に釣瓶を落とす。

水を汲み上げて擦りむいた左腕を善法寺さんに洗ってもらった。

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