血 nk ページ14
nk side
一目惚れだった。
話したことも見たことも無かったのにこんなに心が高鳴るなんて思いもしなかった。
まぁ、こんな物騒な世の中では許されない事なのかもしれないけれど。
‘‘ また○○で出たらしいよ ’’
‘‘ えぇ、またぁ？ ほんと、あいつら消えてくれないかな ’’
‘‘ これじゃ昼しか安全に外に出れないよね ’’
……本当に、こんな物騒な世の中じゃ。
早く君のもとへ向かわなくちゃ。
他の奴らに奪われないように。
「っあ、A！」
『……なかむ？ だよねその声』
「……うん、そうだよ」
俺の姿を見た事がない君はどんな風に思ってるのかな。
……君の中の俺はどんな姿なのだろうか。
思えば、不運な事件だった。
たまたま夜に買い物に行って、奴らに出会ってしまったのだから。
だけど幸運な事に盲目だけで済んだのだ。
世間は命があっただけ有難いと思えなんて口を揃えて言うけれど、君にとってはどれだけ辛かった出来事だっただろうか。
今ではそんな面影も見せないけれど。
君には悪いけど、俺にとってはこの出来事はチャンスでしか無かった。
やっと君に取り入ることが出来たんだ。
絶対にこれからは俺が守ってみせるんだ。
『あのね、』
「……ん？どしたの？」
『いつもありがと、なかむ』
「いいんだ、俺がやりたいだけだから」
そう言うと君は微笑んで目を開いた。
その目に光は宿っていない。
なのに、なぜこんなにも美しく見えるのだろうか。
君の瞳に俺はこんなにもちゃんと映っているのに。
なぜ君には見えないのだろうか。
愛してるんだ、心の底から。
君にもいつか答えて欲しいんだ。
「じゃあ、ここで」
『……うん、バイバイ』
「……バイバイ」
彼女を安全に送り届けるのが俺の役目。
いつも隣を歩いているのに言葉を少ししか交わさない。
それを思うと、やっぱり警戒されてるのかなと感じる。
大丈夫、大丈夫だから。
……俺は君の許しが出るまで待つから。
だから、早く君の甘い血を俺に与えて？
夜の街、路地裏で人の血を吸い生きる奴は水色の目を覗かせる。
……ああ、今日も誰かを犠牲にしなければ。
鋭い牙を見せ、水色の目が次第に林檎の様に真っ赤に染まっていくのを彼女は窓から見ていた。
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作者名：れもん | 作成日時：2018年10月31日 17時
