reminiscence..【佐野万次郎】 (ページ4)

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"万次郎"は真兄の弟の名前。

櫂達からたまに聞いていた名前だったけど、この時はまだ会ったことは無かった。
だからどんな子なんだろう？仲良くなれるかな？って私の中の"万次郎像"を勝手にイメージしてドキドキわくわくしながら行ったっけ。

うちから真兄の家までは歩いて15分くらいの距離。
両親達が亡くなって以来、久しぶりの外出だった。
櫂が「久しぶりだから特別に」って私にお気に入りのワンピースを着せてくれたんだ。
私が喜ぶと櫂も嬉しそうに笑ってくれた。
それだけで最高な1日が始まる予感がしたの…

家を出てしばらく歩くと大きな家が見えてきた。
櫂は指をさして「ほら、あの家だぞ」って私に教えてくれた。
私のテンションは最高潮だった。

敷地内に入ると櫂が慣れたように「真〜！！来たぞ〜！！」って大声で叫んだ。
すると真兄が顔を出して「おっ、来たか」とニカッと笑った。

「よく来たな〜、たくさん歩いて疲れただろ？」

『ううん、全然大丈夫っ』

「こいつ向かってる道中何度も「まだ？まだ着かない？」ってうっさくてよ(笑)」

『だって楽しみにしてたから〜』

「そっかそっか。じゃあ、俺は何か取ってくるから部屋の前で待ってろよ」

「おう、悪ぃな」

櫂に手を引かれて小屋の前まで移動してくると、バイクが置いてあった。

『このバイク誰の？真兄？』

「そ、一から組み立ててる最中なんだ」

櫂はそう言うとバイクの脇に置いてある工具を手に取り、ガチャガチャとバイクをいじり始めた。
私はその場にしゃがむとその様子をジッと見ていた。

(父さんもたまに同じことしてたっけ…)

バイクをいじる櫂の姿に父の面影が重なる。
「父さんも若い時は」が口癖の人だった。
櫂が父さんのバイクに傷をつけた時は年甲斐にもなく落ち込んで泣いてたね..

『ふ〜ん…かっこいーバイクだね』

ぼーっと櫂の姿を眺めてると「結構進んだだろ？」と真兄が戻ってきた。

「こんなんしかなかったけど好きに食ってくれ」そういうと持っていたお盆をケースの上に置いた。