reminiscence..【佐野万次郎】 (ページ28)

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その子は、永瀬くんといって圭介と同じクラスの子。

私も永瀬くんとは同じクラスになったことがあって挨拶をされればフツーに返すし、話しかけられればフリーに会話するいたってフツーの友達。

休み時間になると圭介を含む男子達をよく見かけるから圭介と仲が良いのも知ってる。
彼は運動神経が良くて、分け隔てなく誰に対しても気さくで優しい。
そんな彼だからか女子達からの人気もダントツで高い。

そしてある日の昼休み、私が教科書を貸しに隣のクラスまで行った時のことだった。
ドアの所できょろきょろと圭介を探していると「お！Aじゃん、どうしたー？」と声をかけてくれたのは永瀬くんだった。
彼は私に近づくなり「場地ならもう遊びに行ったぞ」と言った。

『ホントに？！…っもぉ圭介ったら自分が貸してって言ってきたくせに…』

私が小言をブツブツと呟いているとそれを笑いながら聞いていた永瀬くんは「それ、場地に渡すんだろ？良かったらオレが渡しておくけど」と教科書を指差した。

『ごめんね永瀬くん、じゃあお願いします。…あ！明日私もまた使うから放課後になったら返すようにも伝えといてくれる？』

「あ、おっけおっけ！伝えとく」

私は『ありがとう』と言い用が済むと自分のクラスへと足を向けたところで永瀬くんに呼び止められた。
反射的に振り向くと永瀬くんは視線を外しながら私に近づいた。

「あ、あのさ…」彼の態度に私は不思議そうに首を傾げた。

「今日の放課後…なんか予定ある？」

『今日？』

「今日じゃなくても明日…でもいいんだけど……いややっぱ今日！！」

『今日ならなにも予定ないよ？明日は習い事があるんだ』

「お、そうか、じゃあ…あの、終わったら非常階段のとこまで来てくれる…か？」

『？…うん、分かった非常階段ね。』

「じゃ、じゃあ、また、あとで」

『うん！またあとでね』

なんだか様子がヘンだったなぁ〜…と思いながらも私は教室へと戻った。
まぁなにか相談とかかななんて他人事のように思ってた私はつくづく鈍感だなと今になってそう思った。

そして全部の授業が終わる頃にはすっかり忘れていて帰る身支度をして万次郎を起こしていると圭介が「A！わりぃわりぃ」と言いながら貸していた教科書をヒラヒラを掲げてやって来た。

「ほい、サンキューな！助かったわ」

『もうホントすぐ忘れるんだから…ほら、次郎帰るよ』