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月恋 第234話 「ふにゃりと柔らかく笑う」 ページ44

なんとなく目が覚めて、プロセラの共有ルームで時間を潰していれば。同じく眠れなかったらしいAちゃんが小説片手にやって来た。

俺も眠れないから一緒に少し話そうと誘えば、嬉しそうな笑顔を見せながら隣に座ってくれた。

俺達の小さくて可愛い妹分。でも、誰よりも気遣いが出来る優しい子。

俺は今日、その優しさに救われた。

今日の大会。あと一歩のところで追い付けず。結果は残念なものとなってしまった。あれだけ練習したのに、と言う悔しさと、もっと速く走れていれば、と言う後悔に押し潰されそうになって。

じわりじわりと目頭が熱くなり、視界がぼやけていったのを覚えている。でもこんなところで泣くわけにはいかないと、必死に悔しさの雫を堪えていれば、涙がひとりで俺のもとへとやって来たのだ。

涙に励まされ、慰められ、俺は漸く素直に泣くことが出来た。

たくさん泣いたあと、すっきりした気持ちで涙にお礼を伝えれば、Aちゃんが気を遣って俺達を二人にしてくれたと聞かされたのである。

彼女が居なければ、俺は暗い気持ちを引き摺ったままだった。こうして前を向けるのは、彼女のお陰でもある。

「Aちゃん、今日はありがとう。俺と涙を二人にしてくれて」

今日の大会の感想を楽しそうに話してくれるAちゃんに、お礼を伝えれば、なぜかばつが悪そうに眉をひそめられ、視線を外されてしまった。

「すみません。その、出過ぎた真似をしてしまいました」

「そんなことないよ」

ずっと気にしていたのだろう。此方へ深々と頭を下げる彼女に対し、俺は力強くその言葉を否定し首を横に振った。

Aちゃんは分かっていない。俺がそれだけで、どんなに救われたのか。

「俺はAちゃんと涙のお陰で前を向くことが出来たんだ。本当にありがとう」

彼女の手を取り、そっと俺の両手で包み込む。Aちゃんの白くて小さな手に、俺の感謝の気持ちが伝わるように少しだけ力を込めた。

頭を恐る恐る上げたAちゃんは俺の言葉を聞き、安心したようにふにゃりと柔らかく笑ったのであった。

月恋 第235話 「深紅に彩られた唇が告げる」→←月恋 第233話 「眠れない」



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snow(プロフ) - 櫻餅さん» すごくキャラの性格が出ていると思います。皆の良いところが出ているなと思います。忙しいと思いますが無理せずに頑張って下さい! (2019年5月17日 17時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - snowさん» コメント有難う御座います!夢主人公だけでなく、書かせて頂いているツキウタ。キャラも好きだと言って頂けてとても嬉しいです! (2019年5月17日 5時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - こんばんわ♪更新、ありがとうございます。やっぱり好きです。ヒロインの真っ直ぐな所も可愛いけど、他のキャラも好き。今回の話は新君らしいなって気がしました。是非、志望校に受かって欲しいなと思いました。 (2019年5月16日 21時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - といろさん» コメント有難う御座います!また不定期ではありますが、更新頑張っていきたいと思っておりますので宜しくお願い致しますm(__)m (2019年5月15日 2時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
といろ - 再開待ってました!ありがとうございます…!これからもずっと応援しています。無理なさらぬよう、お願いします…!! (2019年5月14日 13時) (レス) id: 8af1b1e6db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年11月5日 18時

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