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月恋 第190話 「それはフラグと言うものである」 ページ47

ボロボロ、涙を流し、泣き過ぎて上手く呂律の回らぬ舌で話す私に優しく、そして小さく相槌を打ちながら、私の体を抱き締めてポンポン、一定の間隔で背中を軽く叩いて慰める夜さん。それがまるで本当のお母さんの様で、懐かしさと暖かさを感じさせ私の涙腺は更に崩壊。涙は止まることを知らず、次々と瞳から頬へ伝い私を抱き締める夜さんの服を濡らす。
ビャービャー子供みたいに泣き続ける私を夜さんは呆れることも、決して離すことも無く。私が泣き止むまでずっと、細くてしなやかながらも何処か男らしさのある長い両腕で力強く抱き締めてくれていた。

途中、夜さんをお母さんとついうっかり呼び間違えたのはご愛嬌。ママみが強かったとしか言い訳の仕様がない。

「落ち着いた? ごめんね、無理に聞き出す様な真似して」

「……いえ、もとはと言えば嘘をついていた私の方が悪いですから。すみませんでした」

グスグス、鼻を鳴らしながら夜さんに謝罪の言葉を述べれば「俺もごめんね」とふんわり頭を撫でられた。

「あの、話を最後まで聞いて下さってありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして。
こちらこそ、本当のことを話してくれてありがとう」

夜さんは私の一言に、先程までの泣き出しそうな表情から一変。嬉しそうに目を細め、顔を綻ばせた。
私も私で、胸の内に溜め込んだもの全てを吐き出したものだから今はとてもスッキリした気分。矢張り、最初から嘘をつくべきではなかったのだ。

どよめきっていた気分に少しずつ光が差してきた頃、頬とはまた違った意味で腫れぼったくなってしまった酷い目元をどうにかするため、夜さんが用意してくれた濡れタオルを自分の顔に押し付ける。こんな顔、事情を知らない夜さん以外の人に見られたくない。見られたら絶対笑われる。特に葉月さんや新さん辺りに。

どうか今だけは誰も来ないでくれ。その願いも虚しく、プロセラとグラビの共有ルームを繋ぐ螺旋階段からガヤガヤと騒がしい声が幾つか聞こえ、徐々にそれが此方へと近付いてきた。それに対し、私は軽く頭を抱えた。

―――ああ、私の願いはフラグだったのか。

月恋 第191話 「怒気を含む」→←月恋 第189話 「天使と悪魔の囁き」



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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時

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