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月恋 第159話 「幸せの過剰摂取にご注意下さい」 ページ17

「さっきまで晴れてたのに………」

スタジオの出入り口である大きなガラス扉。
その隅で、扉から透けて見える外の景色を呆然としながら眺め、立ち尽くしているのはSeleasの爽やか王子と名高い照瀬 結乃さん。身長が高く格好良い顔立ちに、あっさりさっぱり、竹を割った様な性格であるため同性に人気なアイドルである。

「えっと……結乃さん?」

明らかに肩を落とし、何処かショックを受けている様子ではあり声を掛けまいか掛けるまいか些か迷ったが、彼女は事務所の先輩。このまま挨拶もせずに帰っては失礼に当たると恐る恐る、緊張した面持ちで声を掛けた。

「あれ、君は確かツキウタ。宣伝アイドルのAちゃんだよね?」

矢張り元気は無いが私の存在に気付き、結乃さんは小さく口角を上げて私に微笑み掛けた。

私のことを認識して下さっている喜びと、彼女の格好良いハスキーボイスで名前を呼ばれた喜び、そして彼女の美しくもキリリとした笑顔を見れた喜び。幸福と幸福と幸福の過剰摂取により、私の脳内でリーンゴーンと教会の鐘が鳴り響き、一瞬天国が見えた。

人はどうやら身に余る幸せが一気に押し寄せてくると昇天しかかるようだ。非常に危険である。

「初めましてだよね? 私はSeleasの照瀬 結乃、よろしくね!」

「え、あ、えっと、ツキウタ。宣伝アイドルの暦屋 Aです。こ、こ、此方こそ末永く……じゃなくて、宜しくお願い致します!」

私は何を口走っているのだろうか。自分の慌てように白目を向きたくなった。

私と言う後輩の登場により、先程の落ち込んだ姿とは打って変わって先輩らしいしっかり者な姿を取り戻した彼女。

私のテンパり様を咎めるわけでもなく、にっこり優しい笑顔を浮かべて「うん、よろしくね」と、彼女はすっと右手を私の前に差し出した。

そこで私はピタッと動きを止めた。否、故意的に動きを止めた訳ではない。止まってしまったのである。

目の前に差し出された、白身魚の様にお美しい手を前にして。そして私は悟った。

この手を握ればきっと私は感動のあまり、一生手を洗いたくなくなってしまう、と。

月恋 第160話 「雨の日の思い出」→←月恋 第158話 「実に薄情である」



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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時

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