月恋 第153話 「もどかしい」 ページ11
「あれ?」
街灯の下にて、見覚えのある少女の姿を発見。
「え、なに? どうしたの駆?!」
ビビりまくって若干混乱中の恋を尻目に、ちょっと涙目になっている俺はバッチリ彼女と目が合う。
色素の薄い黒髪に大きなつり目の瞳の紛うことなき美少女フェイス。間違いない、Aである。
「A?」
「はい」
目が合った彼女に恐る恐る名前を呼ぶと、彼女は反射的に返事をした。
「え、何でAが此処に?!」
漸く冷静さを取り戻した恋も思わず驚きの声を上げる。それもそのはず。
だって彼女は今日の午後からずっと熱を出して寝込んでいたのだから。
そんな彼女がこんな遅い時間に出歩く筈がない。俺も恋も、多分他の皆もそう思っている。だから、目の前の彼女を見て動揺を示したのだ。
「どうしたのA?」
街灯の光に照らされ、ハッキリと見える彼女の顔を見詰めながら何故此処に居るのかを問い掛ける。
「少し喉が渇いてしまったので、コンビニに飲み物を買いに来たんです」
すると彼女はまだ熱っぽく赤い頬を、右手の人差し指で軽くかきながら俺の問いに答えた。
そのくらい頼んでくれれば買ってくるのになァ。と、簡単に俺達を頼ってくれないAに少し寂しさを覚える。
「そのくらい俺や駆に頼んでくれれば良いのに」
俺が思ったことを読んだかのように、全く同じ事を恋が口にする。けれど彼女はそれを聞き、少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「いえ、そこまでしていただくのは流石に悪いです。熱も大分下がってきてますし………」
Aがやって来て早2ヶ月以上。
これだけ一緒に過ごしてきても、彼女はまだ俺達に遠慮しているみたいだ。
確かに俺達はAにとって年上のお兄さんであり、事務所の先輩であり仕事先の先輩にあたる。
多少の遠慮や距離感が出来てしまうのは仕方がないこと。けれど彼女の場合は、距離の取り過ぎだと最近思う。
今でこそ俺を駆兄、恋を恋さんと呼んでくれているが最初の頃は二人とも名字呼び。俺達が言わなければずっと名字呼びが続いていただろう。
名前で呼んでくれるようになり、仕事のことで分からないことがあれば聞いてくれるようになったけれど、今日みたいに風邪を引いたり仕事先で嫌なことがあっても相談はしてくれない。
何処か人とは一線を置いて自分の領域に入らせてくれない彼女。
俺は何だかそれが寂しくて、迚ももどかしく感じた。
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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時