月に恋せよ暦ガール 【4】

月恋 第152話 「くしゃみ事件」 ページ10

「頑張るのは良いことだが、あんまり無理するなよ?」

海さんにそう忠告されつつ、わしゃわしゃと頭を撫でられたその夜のことである。

「喉が渇いた……」

病院で貰って来た風邪薬のお陰でかだいぶ熱も下がり、ぐっすり夢の中に居たはずがふと目が覚めた。

そして自分の喉が渇いていることに気付き、ベッドからまだ少し怠い体を起き上がらせ冷蔵庫を覗きに行く。

冷蔵庫を開けた瞬間に放たれる冷気を受けて、熱い頬が少し冷まされた気がした。

「あれ、もう無いや」

冷蔵庫の中は皆さんから貰ったお見舞い品で埋め尽くされているものの、水やお茶と言った水分が何処にも見当たらない。

郁兄から貰ったスポーツドリンクは寝る前に飲んじゃったし、お茶や水はいつも喉が渇いた時に近くのコンビニで買ってきている。

今日はたまたま、いつも常備されているはずのお茶が切れていたらしい。

詰まりは、今自分の渇ききった喉を潤すものが此処には無いということ。

このまま気にせず寝て、明日買ってくると言う手だてもあるが喉の奥がベタついているようで気持ちが悪い。

「仕方ない、買ってこよう」

冷蔵庫の扉を閉めてから、財布を片手に私はやけに明るい月の光と眩しいくらいの街灯の明かりを頼りにコンビニへ向かったのである。







「ふえっくしょい!!」

コンビニへ向かう途中、何度も女子力の低いくしゃみを連発。人気の無い夜道に私の大きなくしゃみが木霊する。

風邪菌を撒き散らさないよう、気休めながらマスクをしてきて正解である。

それにしても私の面倒を見てくれていた雪さんと千桜さん、それにお見舞い品を持ってきた次いでとしてお粥を作ってくれた上に、林檎をウサギさんの形に剥いてくれた海さんは大丈夫だろうか。

「ひっくしょい!!」

風邪が移っていないと良いけど、と考えながら本日10回目のくしゃみをした時である。

「ぎゃあっ!!今、誰かのくしゃみが聞こえた! まさか幽霊?! おっさんみたいなくしゃみする幽霊なの?!」

「ちょ、ちょっと変なこと言わないでよ恋!」

恋さんの悲鳴と駆兄の声がコンビニの近くから聞こえてきた。

何でこんな時間に二人が居るのか、恋さんくしゃみ1つでビビりすぎですよ、とか色々突っ込みたいことはあるが、まず此れだけは言わせてください。

―――おっさんみたいなくしゃみで悪かったですね!! 後、誰かティッシュを持ってませんか?!

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