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月恋 第132話 「煙草の煙」※話の内容に少しご注意下さい ページ38

「なるほどな、色気より食い気だからラブシーンで上手くいかない訳か」

私が堀宮さんに人と遊ぶよりも、何か一緒に食べに行くことが多いと話した直ぐ後のこと。

私達が座っているベンチの近くにあった喫煙所から、皮肉たっぷりの言葉を口にしながら朏さんが顔を覗かせた。

「撮影の際に大変ご迷惑をお掛けしています。申し訳ありません!」

私は咄嗟にベンチから立ち上がり、深々と頭を下げる。

「ま、売れてないアイドルのお前には、ドラマなんて無理な話だったな。俺の検討違いってところか。これに懲りたら、此れからは大人しく小さなイベントで細々と歌でも歌ってることだな…………」

皮肉を言い終わった朏さんに手招きをされ、何だろうと思いながら彼の目の前まで行くと――――

「ゲホッ、コホッ!」

「Aちゃん、大丈夫?!」

突然吸っていた煙草の煙を吹き掛けられた。

此れには吹き掛けられた本人である私も、堀宮さんもびっくり。

慣れない煙と煙草の匂いが私の鼻孔を刺激し、思わず噎せ返す。

撮影の足を引っ張ってしまっている私が怒られるのも無理はない。けれど、煙草の煙を吹き掛けられる必要があったのだろうか。此れは所謂、故意的な受動喫煙である。

そもそも禁煙が進められている現代に、そんな事が許される訳がない。

「言葉だけの謝罪は要らねェ。人にガン飛ばす位の余裕があるなら、集中してさっさと撮影を進めろ」

噎せ込む私に朏さんは酷く冷めた視線を向けて、そう言い放った。

私は元々つり目気味で人に性格がキツそうだと言われるし、睨んでいるのかと勘違いされることが多々ある。

確かに性格は優しくないし、キツイ方だと言える。けれど、自分に対して何も悪いことをしていない人間を睨んだつもりもないし、そんな無闇やたらと人を睨んでいる訳ではない。

ましてや、仕事の先輩を睨み付けるなんて持ってのほか。

この目付きのせいで睨んでいるよう誤解されてしまったのは仕方ないとして、たかだかそれだけで煙草の煙を吹き掛けられるなんて思っても見なかった話だ。

此れには例え相手が先輩だからと言えど、我慢ならなかった。

私は持っていたペットボトルの蓋を開け、勢いよく彼に向けて中に半分以上残っていた水全てを吹っ掛けたのである。

「はい消火ー」

ペットボトルの中に入っていた水はバッシャーンと大きな水音を立て、朏さん目掛けて外へと飛び出し、煙草の火を消す次いでに彼の上半身をびしょびしょに濡らした。

月恋 第133話 「受動喫煙にお気をつけ下さい」→←月恋 第131話 「アシスタントディレクター」



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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間!!!さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間!!! - 続編おめでとうございます!これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね!!!更新頑張ってください!応援してます! (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年3月13日 2時

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