月に恋せよ暦ガール 【3】

月恋 第131話 「アシスタントディレクター」 ページ37

「はい、カーット! 暦屋さん、もう少しその台詞に気持ち込めてくれる?一旦休憩あげるから、その間に頭整理してきてね」

「はい」

ドラマの撮影現場にて、今日の私はNGを連発する程調子が悪い。

今日は朏さん演じる「先生」と「アカリ」のラブシーンの撮影である。それなのに気持ちがいまいち入らず、監督をイライラさせてばかり。

ちゃんと役作りをしてきたと言うのに、何故こうも上手くいかないのだろうか。

「はあ………」

「大丈夫?」

NGだけでなく溜め息も連発する私に声を掛けてくれたのはADの堀宮 英知さん。

明るくて人懐っこい笑顔が素敵な優しいお兄さん的存在。

「今、休憩中だし、良かったら一緒に飲み物でも買いに行きながら少しだけお話ししようか。ちょっと気分転換した方が気も楽になるだろうし、ね?」

普段の挨拶以外で話したのは今日が初めて。だが、ちょっと外に出たい気分だったため、彼の誘いを受けて頭を冷やすために少しだけ外に出た。

「すみません、堀宮さん」

「大丈夫大丈夫。俺が好きでやってることだから、気にしないで?」

堀宮さんは結構世話焼きタイプなのではないだろうか。と思いながら彼と一言、二言交わしていくうちに段々と打ち解けてきた。

「陽くん、今日は居ないもんね。ちょっと不安?」

陽さんは今日の撮影に出番が無いため、他の仕事へ行っている。

「大丈夫です。話す相手が居ない訳では無いので」

マリアちゃんも居るし、「ユウタ」役の俳優さんや、と或る大御所女優さんとも仲良くなったため、あまり一人で居る不安や心細さは感じない。

「ああ、そう言えばよくマリアちゃんとも話してるもんね。普段は誰かと遊んだりするの?」

「最近はマリアちゃんとクレープ食べに行ったり、駆兄………じゃなくて師走さんと蕎麦を食べに行ったり、遊ぶより誰かとご飯食べてばっかです!」

「ブハッ!」

「え、堀宮さん?!」

話しているうちに何時もの調子が戻ってきた私。

ちょっとふざけてドヤ顔をした途端、堀宮さんが飲んでいたスポーツドリンクを吹き出しかけ、噎せ込んだ。

――――――ごめんなさい

月恋 第132話 「煙草の煙」※話の内容に少しご注意下さい→←月恋 第130話 「拗ねている顔が可愛いと思う」

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