月恋 第126話 「大粒の」 ページ32
Aがオーディションを受けたドラマに出演することが決まった。
ヒロインをヒーローと奪い合うライバル役として。
残念ながらヒロインには慣れなかったが、その親友役としてドラマに出演することとなったAを驚かせようと、そのことは知らせずに撮影現場を訪れた。
そこには、辺りを見てから「はあっ」と短い溜め息を吐き背中を丸めるAの姿があった。
おいおい、何時も姿勢の良いお前はどうしたんだよと心の中でツッコミを入れつつ背後から声を掛ける。
案の定驚いていたし、俺の顔を見てホッとした表情を浮かべたA。
なんだ、意外に可愛いところあんじゃんと思ったのも束の間。
何時もの調子を取り戻したAは、通常運転で俺をからかってきたのである。
他の女の子達に接するように、こいつにも優しくしてやりたいが、如何せん、こいつはどうにも他の女の子達とは違い、扱いが難しい。
新や隼と似たようなノリで俺と話してくるものだから、ついついツッコミを入れてしまうし、隼や新と似た雑な対応になってしまう。
どうすれば良いのやらと、色々と考え込んでいるうちにAの出番がやって来た。
さっきまで緊張するとぼやいていたが、大丈夫なのか?
肝っ玉は座っているが、何処か抜けている一面のあるAを心配する。
だが、スタートと言う声が上がったと同時にAの雰囲気がガラリと変わり、俺だけでなくこの場に居る全員がアイツを見て息を飲んだ。
「ねえ、ちょっと良い?」
場面はヒーローである「ユウタ」がヒロインの「サヤカ」を振った翌日、学校の昼休み。
ヒロインが振られたことを聞き、親友役である「アカリ」が誰もいない屋上に「ユウタ」を呼び出し、事情を問い質す。
先程まで顔が強張り、カチカチに緊張していたAは何処へやら。すっかり「アカリ」と言う人格が憑依している。
「どうしてあの子を振ったりなんかしたの?」
ずかずかと詰め寄られ、「ユウタ」も戸惑いを隠せない表情を浮かべるが、どうにもAの演技が上手過ぎて、「ユウタ」役の俳優を食ってしまっている。
これ、ヒロインがアイツでも全然問題なかったのでは無いだろうか。と言うか、断然アイツの方が良かったのでは?と思うほどだ。
「…………」
「答えなさいよ!!」
「ユウタ」をフェンスまで追い込み、力強くフェンスを拳で殴るそんな「アカリ」の瞳からはボロボロと大粒の涙が溢れてきていた。
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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間！！！さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (
レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間！！！ - 続編おめでとうございます！これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね！！！更新頑張ってください！応援してます！ (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2018年3月13日 2時
