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月恋 第119話 「焚き付けてしまった」 ページ25

朏さんは今回のドラマで、ヒロインのクラスの担任役であり、ヒロインの親友が淡い恋心を寄せる理数科教師でもある。

そして今、開かれたページはヒロインの親友とその先生の恋の行方に焦点を当てた場面だ。

ヒロインの親友、「アカリ」は吹奏楽部に所属する16歳の少し気が強い女の子。

物言いはキツいけれど根は優しく、想いを寄せる先生には可愛らしい一面を見せる何処にでも居る普通の子だ。

私は今、朏さんにヒロインではなく、この「アカリ」を演じろと指示された。

台本は持ちながらで良いと言われたが、私は「アカリ」を台本の始めに書かれている登場人物紹介でしか知らない。

彼女を理解する時間も無く、ぶっつけ本番で役を演じろと言われているのだ。無理強いにも程がある。

「どうした?」

「あ、いえ、何でもありません」

いきなり何なんだと、文句の1つや2つ言いたい所ではあるが、彼は芸能界の先輩だし、他の面接官も居る。

それに、彼の鋭い目付きが少し怖くて何も言えない。

「この台詞からやってくれ」と朏さんに指示された通り、私は「アカリ」を演じるしかなくなった。

台詞に一通り目を通し、台詞から「アカリ」の人柄や雰囲気を出来る限り読み取る。

そして大体の空気を掴み取り、己の体から自分の人格を追い出し、「アカリ」と言う少女を憑依させる様、芝居に集中する。

場所は放課後の教室。そこに残った「アカリ」と「先生」との会話シーンである。

「先生。先生って、彼女居るんですか?」

気が強くて、何でもハッキリと言葉にして伝えるタイプの彼女は、好きな相手が教師だからと憶さず、グイグイと押して積極的にアピールしていく子。

そんな彼女が冗談半分、本気半分で質問をして悪戯っ子の様な笑みを浮かべる。

「どうしてだ?」

先生は彼女の性格をよく理解していた。

だから、彼女が自分を好きだと言うことに気付いた先生演じる朏さんは少しだけ眉を潜める。

「気になるから、かな。それだけじゃダメ?」

小さく首を傾げ、上目使いに彼に迫る彼女はまさに男性を翻弄させる小悪魔。それもすべて計算のうち。

「居るよ」

彼女に惑わされぬよう、そして彼女が自分のことを諦めてくれるよう、先生は咄嗟に嘘をつく。けれど、それだけでは彼女を止めることなんて出来ない。

「じゃあ、その女から先生を奪うだけですね」

先生は恋する一人の少女を焚き付けてしまったのである。

「アカリ」はペロリと舌で上唇を舐め、妖艶に微笑んだ。

月恋 第120話 「緊張する」→←月恋 第118話 「理解が追い付かない」



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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間!!!さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間!!! - 続編おめでとうございます!これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね!!!更新頑張ってください!応援してます! (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年3月13日 2時

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