月恋 第118話 「理解が追い付かない」 ページ24
テスト勉強をして、芝居の練習と面接の練習もして、それからちょくちょく増えてきたアイドルとしてのお仕事もこなし、目まぐるしく時間が過ぎて数日後、漸くテストが終わり、オーディション当日となった。
「エントリーナンバー17番、暦屋 Aです。宜しくお願いします」
真っ直ぐ前を向き、面接官一人一人の目を見てから頭を深く下げる。
前から17番目、待つこと数時間後。やっと自分の出番がやってきて、心臓をバクバクと鳴らしながら面接室へと足を踏み入れ、オーディション開始。
「どうぞお座り下さい」という言葉を耳にし、失礼しますと一礼してから用意されていたパイプ椅子に腰掛ける。
面接官は5人。今回出演するヒロインの相手役である最近人気のイケメン若手俳優さんと、もう一人、何処か見覚えのある男性が面接官の中に居た。
そして、机の上に置かれたネームプレートを見て思い出した。
朏 ユズルさん。確か、新さん達が主演を務めた夢見草に、土方歳三役として出演していた若手実力派俳優さんだ。
流石は土方歳三役をこなしただけあって、彼が醸し出す雰囲気は何処か刺々しい。
美形ではあるが、少しオーラが怖い気がする。
彼の鋭い切れ長の目に捉えられ、更に緊張感が増す。
緊張に押し潰されないよう、不安を口から吹き出すように深呼吸をして面接に望む。
「芝居経験は?」、「どうしてこのオーディションを受けようと思ったの?」等々、次々飛んで来る質問を黒月さんと練習した通り、落ち着き払って堂々と答えていった。
面接は難なく終わり、次は問題の芝居。
ヒロインとその相手役、詰まりはヒーローとの場面だからイケメン若手俳優さんと掛け合いをすることになる筈だったのだが――――
「暦屋だったな?」
「は、はい!」
掛け合いをしている途中、突然、朏さんが立ち上がり芝居にストップを掛けてきた。
朏さんは自分の隣に座っていた此のドラマの監督さんにコソコソと耳打ちをして、台本を二冊手に取ったのである。
一体どうしたのだろうか。私は何か、自分が気付かぬうちに失敗をおかしてしまったのだろうか。
何かやらかしてしまったのだろうかと額にうっすら冷や汗をかき、内心ハラハラしていると、おもむろに朏さんから今演じているシーンとは全く別のシーンのページを開いた台本を手渡された。
「台本は持ったままで良い、俺とこの場面を演じろ」
「は、はい?!」
突然の出来事に、理解が追い付かない。
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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間!!!さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間!!! - 続編おめでとうございます!これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね!!!更新頑張ってください!応援してます! (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年3月13日 2時