月恋 第39話 「息を飲み込む」 ページ40
「Aちゃん、出身地は?」
「岐阜県高山市です」
「へぇ、それじゃあ結構山奥だね。東京来て、ビルの多さにビックリしたんじゃない?」
「そうですね。人の多さにも驚きました」
撮影が終わり、次のと或るアイドル雑誌の取材へ移った。次々と飛んでくる質問一つ一つを聞き逃さない様、そして記者の方に失礼が無い様、丁寧に答えていく。
「ま、田舎だもんね」
「アハハッ、東京の方にとってはそうかもしれませんね」
私のから笑いが、取材している部屋に響く。
14年間住んだ愛着のある地元を鼻で笑われ、一瞬だけ笑顔が崩れる。
田舎だろうが、そうでなかろうが住めば都。
ビルは無くとも自然に囲まれた空気の美味しい所なんだよ! と言うか、田舎じゃないし!!と心の中で思わず反論した。
中年で細身、耳に掛けられた銀縁の眼鏡と困り眉が特徴的で、何処か優しそうな雰囲気を放つ男性記者。けれど性格はその雰囲気に反してか、かなりキツい。
自分の思った事をそのまま口にしていくため、時々、「その言い方は無いんじゃないか?」と此方が眉を潜める様な発言をしてくる。
悪く言えば遠慮がない人、良く言えば素直な人だ。
「好きなお菓子とフルーツは?」
「どら焼きとアップルパイ、フルーツは林檎です。林檎系のお菓子や、和菓子が好きです」
「じゃあ食べ物は?」
「か、唐揚げと蕎麦、それとさばの味噌煮。和食が好みです」
「中々渋いね」
「よく言われます」
言い方も人それぞれ、性格も人それぞれ。此処は少しカチンッと来ても我慢しよう。これも仕事だと、割り切って笑顔を浮かべるが、先刻から頬が引きつっている気がして仕方がない。
笑顔を継続させるのも、簡単に見えてそうではないことが分かった。頬の内側が小さく震えている。
そろそろ、頬の筋肉が限界だ。
「じゃあ、最後の質問ね」
幾つか質問をされ、それに対して在り来たりな言葉で返す。それを何度か繰り返し、「この取材、何時まで続くんだろう。食べ物系の質問でお腹減ったな。頬の筋肉痛いな。」なんて思っていたら、それを読み取ったかの様に記者がそう言った。
やっと終わる!と心の中で小さく喜ぶ私に、記者の方は――――
「Aちゃんはどんなアイドルになりたい?」
今朝、笑顔でアメリカに旅立って行った文月さんと全く同じ質問をしてきたのだ。
その瞬間、私はゴクリと唾と共に息を飲み込んだ。
月恋 第40話 「息苦しい空間」→←月恋 第38話 「謎の包容力」
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櫻餅(プロフ) - snowさん» コメント有り難う御座います。少しでも共感して頂けて、大変嬉しく思います。これからツキウタ。メンバーと関わり、夢主がどんどん成長出来るお話にしていきたいと思っておりますので最後までこのお話にお付き合い願えたら嬉しいです。応援有り難う御座います！ (2017年12月21日 19時) (
レス) id: 5dfdc31c69 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - こんにちわ♪最新話読みました。ちょっと、自分のことみたいにホロリとしました。ヒロインちゃんが無事に乗り越えてくれると信じてます。目標が早く見つかること、祈ってます。頑張って下さい！ (2017年12月20日 14時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 櫻餅さん» 待ってます。急激に寒くなりましたので、風邪など引かないように気を付けてください。 (2017年10月7日 1時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - snowさん» ありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです！不定期更新ですが、頑張ります。 (2017年10月7日 0時) (レス) id: aab212b765 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 初めまして♪楽しく拝見させて頂きました。愛ちゃんへの愛が溢れていて、素敵でした。更新、楽しみにしてます。これからも頑張って下さい!! (2017年10月6日 9時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2017年9月19日 0時
