月恋 第30話 「個性」 ページ31
「かんなづ………い、郁兄、その子」
まだまだぎこちない郁兄呼びで、ちょこちょこと此方に駆け寄るAちゃん。
「おっと?!」
飼い主を見つけ、ポチ丸さんは俺の腕の中からAちゃんへと飛び付いた。てっきり、彼女の腕の中へと飛び込んでいくのかと思いきや、ポチ丸さん、何を思ったのか彼女の顔面へ勢いよくダイブ。
「ふべっ!」
ベチッと音を立てて、ポチ丸さんはAちゃんの顔面へ引っ付いた。
「だ、大丈夫?!」
「大丈夫です。何時もの事ですから」
カメレオンに顔面ダイブされるのが何時もの事とは……普通の人ならばそんな体験滅多にしないと思う。と言うツッコミは飲み込み黙る。
彼女の発言は大分個性的で、中々ついていけない所がある。
「ポチ丸さん、可愛いね」
俺もまだまだだなァと思いつつ、話題を替えた。
「ありがとうございます。郁兄、爬虫類は平気ですか?」
「俺は平気だよ」
少し不安そうに此方を見詰めるAちゃん。そんな彼女を安心させるべく、ニッコリと笑いかけてポチ丸さんの頭を優しく撫でる。
ポチ丸さんのギョロりとした大きな目は、よくよく見ると愛嬌がある様に思えた。
「それは良かったです。あの、所でこの子は何処に……」
「ああ、食器棚の中から飛び出してきたんだ」
俺がそう答えると、Aちゃんは一気にサーッと顔を青くさせた。
「ご、ごめんなさい、確実に私の監督不行き届けです! 本当にすみません、この子狭いところが好きで、時々変な所に隠れるんです」
そして勢いよく頭を下げて謝るAちゃんに、慌てる。
「え、いやいやいや、ちょっとびっくりしちゃっただけだから、そんなに謝らないで!」
「で、でも―――」
「それに、ポチ丸さんが食器棚に隠れてくれたお陰で俺はこうしてポチ丸さんと会えたんだし、気にしないで!」
申し訳なさそうにするAちゃんを宥めつつ、明るく笑いかける。
「おーい、お前ら何やってんだ? 夜特製クッキー、食べちまうぞー」
ナイスタイミングで廊下に顔を出した陽に便乗し、Aちゃんを共有ルームへと誘導する。
「ほらほら、Aちゃんも一緒におやつ食べよう。早くしないと陽に全部食べられちゃうよ?」
「私も良いんですか?」
「良いに決まってるでしょ!末っ子が、遠慮しないの。それに、陽や駆にもポチ丸さんを紹介してあげてよ」
戸惑うAちゃんの背中を押し、俺は共有ルームに入って行った。
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櫻餅(プロフ) - snowさん» コメント有り難う御座います。少しでも共感して頂けて、大変嬉しく思います。これからツキウタ。メンバーと関わり、夢主がどんどん成長出来るお話にしていきたいと思っておりますので最後までこのお話にお付き合い願えたら嬉しいです。応援有り難う御座います! (2017年12月21日 19時) (レス) id: 5dfdc31c69 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - こんにちわ♪最新話読みました。ちょっと、自分のことみたいにホロリとしました。ヒロインちゃんが無事に乗り越えてくれると信じてます。目標が早く見つかること、祈ってます。頑張って下さい! (2017年12月20日 14時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 櫻餅さん» 待ってます。急激に寒くなりましたので、風邪など引かないように気を付けてください。 (2017年10月7日 1時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - snowさん» ありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです!不定期更新ですが、頑張ります。 (2017年10月7日 0時) (レス) id: aab212b765 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 初めまして♪楽しく拝見させて頂きました。愛ちゃんへの愛が溢れていて、素敵でした。更新、楽しみにしてます。これからも頑張って下さい!! (2017年10月6日 9時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年9月19日 0時