【ツキウタ。】 月に恋せよ暦ガール

月恋 第3話　「好奇心旺盛」 ページ4

「こ、此所が東京………」

　電車を何回か乗り継ぎ、やっとの事で到着したのは東京である。着いた時には既に夕方で、真上にあった太陽が東から西の方へ沈みかけていた。

　スマホでオーディション場所をチェックしてから、ぐるりと辺りを見渡す。

　私の周りを囲むようにして聳え立つビルの数々に、お洒落なカフェテリアやお店、そして町行く多くの人々。何もかもが新鮮でついつい目移りしてしまう。

　ちょっと危ないかもしれないけれど、散策してみようと私は好奇心を膨らませ、東京の街へと足を踏み入れたのであった。

　先ずは何処から見ていこうか。時間は余り無いから、少ししかお店を巡る事は出来ないが取り敢えずCDショップヘ。

何故、わざわざ東京まで来てCDショップヘ行くのか、その答えはただ1つ!

　我が女神、如月愛さんのCDの数々を拝みに行く為だ。それ以外に理由はない。

　行き先が決まり、すっかり浮かれ気分で近場のCDショップヘと足を進めようとした時―――

「ゴフッ!!」

何者かに背後を取られ、勢い良くのし掛かられたのである。そのまま私は灰色の冷たいコンクリート地面に転倒。

　受け身を取り、何とか無傷で済んだものの背中に何やら重みを感じる。

　一体全体何が私の身に起こったのか、確認する為に背中に乗った何かを落としてしまわぬ様ゆっくりと起き上がる。

　起き上がろうとした時、スッと私の背中から重さが消え急に軽くなったと思ったら目の前に真っ黒な巨大兎と真っ白な小さい兎が現れた。

「ギャァッ!」

驚きのあまり後ろにのけぞり、今度は尻餅をついてしまった。東京に来てから、踏んだり蹴ったりである。

「えっと君は何処かのお家のペットかな?」

　ヒクヒクと動かす小さな鼻が可愛らしい大きな黒兎の首には、ちゃっかり住所の書かれた首輪が付けられていた。見ると、白兎の首にも同じ住所が書かれた首輪があった。

　住所を確認する限り、私が今居る所から多少時間は掛かるが歩いて行けなくも無い場所だ。

　飼い主さんはきっとこの子達が居なくなって、焦っているか困っているか、泣いている。急いでこの子達を送って行ってあげよう。そして私はCDショップが閉まる前に、このミッションを成功させようと意気込んだのである。

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