【ツキウタ。】 月に恋せよ暦ガール

月恋 第11話　「黒田さん」 ページ12

必要書類に名前を書き込んだ後、転入手続きや引っ越しの事に関しては黒月さんが色々掛け合ってくれる事となり、次にツキノ寮へと案内された。

　グラビの共有ルームの方に、プロセラメンバーもグラビメンバーも集まって居るらしく私は挨拶をする為、黒月さんに誘導されるまま部屋へと足を踏み入れたのである。すると其処には、 系統様々な12人のイケメンが居た。中には昨日会ったばかりの葵さんの姿も。

「ツキウタ。宣伝アイドルになった、暦屋 Aさんだ。このツキノ寮の4階の空き部屋に住む事となったから、皆、色々とたの―――」

「ウギャッ!」

　黒月さんの言葉が終わらないうちに私の視界が一瞬にして暗転、何者かに鳩尾タックルをかまされそのままフローリングの床に転倒。

　顔にはモフモフとした柔らかいものが小さく動いているし、お腹には重たくて温かい何かが蠢(うごめ)いている。

　え、何これ何これ、とプチパニックを頭の中で起こしていると直ぐに視界がクリアになった。

「大丈夫?!」

　慌てた様に私の顔に乗った何かを退かせてくれたのは、明るく元気一杯、良く食べ、もぐもぐかけるんの異名を持つ12月担当、グラビの師走 駆さんであった。

　師走さんの手の中には昨日の小さな白兎、白田さんがジタバタと暴れている。と言うことは、私のお腹の上に乗っているのは―――

「やっぱり黒田さんだ!」

昨日、私の鳩尾に容赦なく突進してきた有り得ない程大きい黒兎、黒田さんが私の腹上で気持ち良さそうに鼻をヒクヒクさせていた。

「黒田を知っているのか?」

　不思議そうな表情を浮かべ、此方をジッと見詰めてくるのはグラビのリーダーであり黒き王様と名高い1月担当、睦月 始さん。

「始さん、この子が昨日言っていた、黒田を届けに来てくれた子ですよ」

其処で空かさず説明を入れてくれるのは、グラビの王子様であり、昨日黒田さんから助けてくれた5月担当、皐月 葵さんだ。

「それはそれは、うちの子が大変お世話になりました」

ふざけ気味にお礼を言うのはグラビのオシャレ担当であり2月担当、ムードメーカー的存在の如月 恋さん。この方は私が憧れ、敬愛してやまない如月愛さんの双子のお兄さんだ。詰まり、私が恋さんをお義兄さん、と呼ぶ日が訪れるかもしれないという訳か。

「それはそれで悪くないかも………」

「え、何が?!」

　オーバーリアクションの恋さんを余所に、私はあらぬ妄想を浮かべ顔を緩ませた。

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