ウラオモテカノジョ～あざとい女の子はきらいですか？～【1】 (ページ4)

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とある先輩は、後輩について語る。ページ4

わたしの事務所の後輩である三ヶ井 Aちゃんは少し……否、とても変な子だ。

明るくて礼儀正しい子だと、周囲からは思われているようであるが実際は違う。

ふたを開けた彼女は変人奇人、馬鹿と天才は紙一重。そんな言葉が似合う面白い女の子なのである。

「ねーぇ、久野ちゃん。早く映画観ようよー」

人の目があるときは絶対に出さないような甘えた声でわたしの名前を呼ぶ彼女は、今日も今日とて、勝手に人の家に上がり込んで、勝手に人のソファの上でくつろいでいるのだ。まさに自分の家のようにリラックスしているところ悪いが、ここは決して彼女の家ではない。

「はーやーくー」
「もー、ちょっと待ってよぅ」

急かす彼女を軽く流して、夕ご飯の用意をする。

可愛らしい見た目に反してよく食べる彼女のためにと、腕によりをかけて作った夕ご飯。それらをテレビの前にあるローテーブルへと並べていけば、たちまち彼女のテンションが上がった。

「えっ、すごいすごい！さすが久野ちゃん！
ねえ、写真撮ってもいい？！」
「いいよいいよ」

カプレーゼやちょっとお洒落に盛り付けたハムを前にしておおはしゃぎ。

なぜかうちに勝手に持ち込んで部屋着にしているピカ○ュウの着ぐるみパジャマのフードについた可愛らしい黄色の耳をゆらゆら揺らしながら、鼻唄混じりに写真を撮りはじめるご機嫌なAちゃん。

ローテーブルの上にはすでに空になった桃の缶ジュースが2つ並んでいる。

お酒ではなくジュースだから絶対に酔わないはずなのだが、二人きりの時だけテンションが酔っぱらいのおっさんレベルでヤバいのは何故だろうか……あと、毎度のことだが、ピ○チュウの着ぐるみパジャマを着ながら、ドラ○もんの主題歌を歌い出すのは本当に謎である。

「久野ちゃーん」
「はぁい」

普段は明るくて人懐っこい子だけれど、プライベートのことを全く話さない。そんな、他の人から見れば謎の多い彼女を可愛がっている同事務所の先輩や他事務所の人達、そしてファンのみんなはこんな愉快な姿を知らない。だから、わたしはいつもちょっとだけ優越感に浸るのだ。

いつでもどこでも人気者な彼女が心を許しているのはわたしだけである、と。