仮面夫婦 (ページ22) - 小説/夢小説

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仮面１７ページ22

「本当に有り得ない!」

　バンッ

　餡蜜と珈琲の乗った机を乱暴に叩く。

　ゆらりと珈琲が小さな波を立て、餡蜜の天辺に君臨するサクランボが一瞬だけ宙に浮いた。

「いやぁ、本当にごめんね。真逆、君が此処まで腹を立てるとは私も思わなかったのだよ。」

　本当に申し訳無いと思っているのかと胸ぐらを掴んで問い質したくなる程、ヘラヘラした笑顔を浮かべてくる太宰さん。

「1辺痛い目に逢って頂かないと判りませんかね、私の此の気持ち。」

　人目を憚らずに怒鳴り、ゴキリと指の音を店内に響かせる。

　キレたら手がつけられないとは、正にこの事かもしれない。

「まあまあ、此処は穏便に。」

　両手を上げ、降参のポーズをとる太宰さん。一向に反省する気の無い彼を見ているうち、次第に怒っているのが莫迦らしくなってきてしまった。

「はあ……いきなり取り乱して失礼致しました。少し否、かなり貴方の態度に腹が立ちました。」

「うん、何れだけ腹が立ったのかは君の怒り様からして善く伝わったよ。」

　おい、本当に反省してないなこの人。
　

　一回、中原さんの重力操作に潰されれば善いのにと心の底から思った。

「で、貴方は何で入水なんかを?」

此のまま話をしていても埒が明かない。私はさっさと餡蜜を食べ乍ら、先刻からずっと気になっていた入水の訳を聞いたら帰ろうと話題の方向性を180度転回させる。然し――――

「処でお嬢さんは既婚者なのかい?」

「はい?」

話を全く以て聞いていないのか、態となのかは判らないが、更に話題を彼に変えられてしまったのである。

　お願いだから私と会話のキャッチボールをしてください。