仮面14 ページ19
「あの、大丈夫ですか?」
なんとか自分の身長よりも確実に高い男性を、川からズルズルズルと引きずり上げる。そして息をしているかの確認をして、ペチペチと頬を軽く叩いてみた。
耳を口元に近づけてみると、すーすーと酸素を体に取り入れる音が聞こえてくるから生きている事に間違いはない。
お腹が空いたから、ご飯を食べに行きたい。早く目を覚ましてくれないかな、体温も高い方だし、呼吸もしっかりしているが救急車呼んだ方が善いのだろうか。等と考え乍ら、彼の様子を暫く見ていると――――
「ん、此処は……」
長い睫毛がゆっくりと上に上がり、固く閉じられた瞼が徐々に開いていき、真っ黒な瞳が露になる。
よくよく顔を見ずとも、中原さんに負けず劣らずの二枚目であった。
「また私は助かってしまった様だ……ちっ。」
心底残念そうに呟き、非道く整った顔を歪め、舌打ちをする。
折角時間を掛けて助けたと云うのに、その態度は余りにも失礼ではないだろうかと考える。だが、勝手に助けたのは此方。私が怒ることでは無いかもしれない。
彼の態度に混乱しつつも、取り敢えず声を掛ける。
「あの、なんか助けちゃってごめんなさい。」
私が男性にそう云って頭を軽く下げると、先刻の厭そうな顔付きは何処へやら、彼はみるみるうちに気だるげにうっすらと開かれた瞳を、思いっきり見開き此方を見詰めると――――
「いえいえ美しいお嬢さん、助けて呉れて有り難う御座います。お陰で私は死ぬ前に、貴女のような可憐な女性に出逢う事が出来ました。お礼と云ってはなんですが私と心中しませんか?」
私の手を細く長い滑らかな指で包み込んだかと思うと、早口で大変理解に苦しむ言葉をつらつらと砂を吐くように並べ立てた。そんな彼に、どう対応して善いか判らなかった私はついうっかり、自分でも驚く位の低い声が喉の奥から出てきた。
「何処かぶつけました?」
――――主に頭の何処かを。
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座敷わらし(プロフ) - 夕霧さん» 有り難う御座います! (2017年7月25日 20時) (レス) id: 3af3fdf8cd (このIDを非表示/違反報告)
夕霧(プロフ) - とても面白いですね! 更新楽しみにしています! (2017年7月23日 1時) (レス) id: fb8453ace7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - きせつふう。さん» ありがとうございます!中々更新できていませんが、頑張ります! (2017年5月29日 22時) (レス) id: 087f4a5487 (このIDを非表示/違反報告)
きせつふう。(プロフ) - 続き気になります.....!更新待ってます!とっても面白いので頑張って下さい! (2017年5月26日 20時) (レス) id: 1841832f9e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 椿さん» 有り難う御座います! (2017年5月12日 19時) (レス) id: e75982502b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年4月20日 18時