仮面夫婦

仮面１２ ページ17

「どうだい、結婚生活は。」

　Aと云う出来すぎた女性と結婚して数ヵ月、首領と丁度二人で居た時、俺と彼女を引き合わせた張本人から其の事について問われた。

「上々です。」

　俺は貼り付けた笑みと共に、平然と偽りの回答を述べる。

　真逆、俺達を結婚させた本人に「必要最低限の事以外、話もしない、関わりもしないぎこちない夫婦です。」等と云える訳がない。

「そうかい、其れは善かった。」

　首領が満足した様な笑みを浮かべたため、俺はホッと一安心。

「君からして、彼女はどうだい？」

「俺には勿体無い位です。淑やかで、頭も善いですし料理も旨い。」

　此れは事実。

　落ち着きがあり、上品且つ淑やか、1歩下がった控えめな性格で、性格に問題など何一つ無い。正に俺の理想の傾向(タイプ)。

　容姿も上の上、純和風の美人で着物がよく似合う気品の有る女性だ。

流石首領が選んだ女性だと感心した。

　彼女と過ごす様になってからは、毎日温かくて旨い飯が食える。

　何一つ文句は無い筈なのだが、何か物足りない。

そう思ってしまっているせいか、彼女と中々打ち解けられずにいる。

「ははっ、彼女は淑やか、か。君達も未だ未だの様だね。」

　乾いた笑いに、凡てを見透かすような首領の瞳。
　
　俺の言葉に隠れた嘘の欠片を鋭く感じ取り、俺達が仮面を被った夫婦だと知っている様な瞳であった。

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