仮面10 ページ12
「ねえA、此れなんてどう?」
「とってもお似合いですよ。」
エリス嬢は満面の笑みを浮かべ、此方にフリルの沢山あしらわれたドレスを持ってくる。
「違うわ、此れはAが着るのよ。」
其の発言且つ驚愕の一言に、一瞬思考が停止した。序でに呼吸も停止して一瞬だけあの世と此の世の境目をさ迷う羽目に………勘弁してくれエリス嬢。
何と云うことであろうか、真逆、旦那の上司が溺愛する御嬢さんに、自分が絶対に生きているうちに着ないような、ロリータと云うフリフリの派手な服を勧められるとは予想外である。
そして私はロリータが似合うような年ではない。
20歳間近の善い年した女、然も今まで着物を好んでいた者が、突然ピンクのフリルのワンピースを着るのは流石に勇気がいるのだ。
だが然し、彼女は首領の愛しの御嬢さん。断ればどうなることやら。
「あの、エリス嬢、私は―――」
しどろもどろになりながら、何とか上手いこと云ってお断りしようとしたが、
「善いンじゃねえか?着てみろよ。」
有ろうことか、中原さんに其れを阻止された。然も、私と二人っきりの時では絶対に見せないような優しい笑みを浮かべて………他人事だと思って此の野郎!
そして私は考える。
成る程、エリス嬢の機嫌のためか。
仕事の上司の御嬢さんだから仕方が無いとしても、物凄く癪である。
「え、ですが―――」
「手前だッたら、何でも似合うぜ。」
おいおい何だ其の殺し文句。
仮令ふりであったとしてもそんな事、面と向かって旦那に云われたら
「わ、判りました。」
1人の女として、妻としてもう着るしか選択肢が無いではないか。
私は全身が先刻の言葉で沸騰しそうな位、熱くなり乍ら、エリス嬢の持ってきた服を受け取り、試着室へ入ったのであった。
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座敷わらし(プロフ) - 夕霧さん» 有り難う御座います! (2017年7月25日 20時) (レス) id: 3af3fdf8cd (このIDを非表示/違反報告)
夕霧(プロフ) - とても面白いですね! 更新楽しみにしています! (2017年7月23日 1時) (レス) id: fb8453ace7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - きせつふう。さん» ありがとうございます!中々更新できていませんが、頑張ります! (2017年5月29日 22時) (レス) id: 087f4a5487 (このIDを非表示/違反報告)
きせつふう。(プロフ) - 続き気になります.....!更新待ってます!とっても面白いので頑張って下さい! (2017年5月26日 20時) (レス) id: 1841832f9e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 椿さん» 有り難う御座います! (2017年5月12日 19時) (レス) id: e75982502b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年4月20日 18時