【歌い手】本当にお前らにあえて良かった。【能力パロ】【学パロ】【番外編】 (ページ13)

今日:7 hit、昨日:6 hit、合計:139 hit

❁♡◆● ページ13

.

そして彼は何よりモテるのである。
黙っていればイケメンだと私も思うけれども。

まぁ中学の特進科の王子様って言われてるくらいだしな、と私は思う。下校時刻になって自分が借りたい本を持って借りた後にカバンにしまう。

＿＿もう、冬になる。
彼とは高校が同じでない限り、会う事はないだろうから。

≪彼方はどこの高校に行くの。≫
そ「東欧。能力系で有名な高校なんだよ。Aは？」
≪分からない。≫
そ「？分からないってなんで？」
≪将来の夢とかない。≫
そ「まぁ俺もないけどさ。とりあえず能力は鍛えといて損はないかなって思うから。」
≪そう。≫

周りから見たら異様な光景に思うだろう。それでも私はこの会話の時間が好きだった。彼方は色んな事を私に教えてくれたし、私も頑張ってそれに答えるようにしていた。

≪図書館司書とか楽しそうって思う。≫
そ「Aに似合うと思うよ、俺は。」
≪でもそうすると大学行かなくてもできるって思うから高校に迷う≫
そ「まぁどこでもいいと思うけど……」
≪彼方はどうやって決めたの、高校。≫
そ「まぁ能力向上のためもあるけど……アイツらが行くって言ってたからかな。」
≪彼方の友人？≫
そ「うん。」
≪便乗しようかな。≫
そ「はは、それでもいいと思う。」

そういって笑う彼に見とれて少し目をそらす。彼は私にとって空であって色彩だった。彼がいれば私の視界が色づいていく。
そうなればなるほど、終わりが近づく事に苦しくなる。

～～～

だけれどもその終わりは予想以上に早く来る事になる。

もう1度言わせてもらうが、彼方はモテるのだ。男女問わずに。だからこそ妬まれたり、恨まれたりする立場なのは私なのだ。
バシャ、という音がする。制服は泥で汚れて雨で濡れていく。

＿＿生意気なのよ
＿＿ぽっと出のやつが近づかないでよ
＿＿色女
＿＿誘惑した

そういう声が入ってくる。でももうどうでもよかった。痛みに耐えきれなくなったらもう彼には会えないと思っていたから。

これは別に初めてではなかったから。彼に近づいたのも"彼女達"に頼まれただけだから。もう役は終わった。私は立ち上がった。彼女達はいつの間にかもういない。そこにはハンカチを持っている彼方が居た。それを私は振り払って言う。

T「……仲良くしたくて近づいたわけじゃない。」

喉が痛くて辛いけど、彼方にこれが及ばないようにしなきゃ。
私は走った。口の中には鉄の香りが充満していた。