#始まり ページ1
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-泥まみれになりながら白球を追いかけるのがただ楽しかった-
偶然に出会った野球はそれまで窮屈だった私の世界を一変させた。
両親の願ったみたいに品があって、
お淑やかな女の子にはどう頑張ってもなれないし、
周りが男だらけの世界で絶対に負けたくないと度を超えた負けず嫌いと、勝利への執着心だけでずっと戦ってきた。
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藤浪「茨木ボーイズの有栖川やんな、中2の時に一回試合したのめっちゃ覚えてんねん
これから3年間よろしく」
「……よろしく」
愛想も良くない、人あたりのいい性格じゃないし、特別誰かと親しくなる気はない。野球をやる上で必要だからコミニュケーションは取るけど、それ以上それ以下はない。
そんな風に思ってて、きっとそれが態度に出てる私に対して何の躊躇いもなく声を掛けてきた物珍しい奴がいた。
「自主練行くんやろ、じゃあ一緒にやろ」
「こないだの練習試合見返さへん?」
「あ、Aって呼ぶから」
一方的に詰めて来る距離感に戸惑いつつも、
いつの日かそれが心地良いことに気がついた。
野球に対して誰よりも紳士的で真面目、
同じ様に負けず嫌いで努力は惜しまない。
"負けたくない"
でもそれ以上に隣で一緒に戦えることへの嬉しさがあった。
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「晋太郎、昨日の試合微妙やったなぁ」
藤浪「それ言うならAもやん」
「うん、まだまだ足りへん」
藤浪「練習、行くやろ?」
「当たり前」
気付けば1年の夏からベンチ入りし、2年の夏から私はスタメンに定着した。
晋太郎もエースとしてマウンドに立ち、いつの頃からか大阪桐蔭の藤浪晋太郎と有栖川Aは全国にその名が広まっていた。
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作者名:まめだいふく | 作成日時:2024年3月18日 19時