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「夕方まで仕事なしで自由ってええなぁ。」
何て真顔で言われて「はぁ？」なんて返事を返すと相手は苦笑いした。
「嘘やって。」
「就活はしてるで？」
「金が良くてそっちに進むのかと思うた。」
「いくら何でもそれはあかんやん。彼女出来て『仕事は女装カフェです。』なんて言えるか！」
「大倉なら言える。」
褒めてへん、それ。思いっ切り「あぁ？」なんて顔で表現したらスマホ眺めてスルーするんだからマジにむかつくんですけどね？
「そっちの仕事はどうなん？」
そんな質問をぶつけるとにんまり笑ってスマホの画面を俺に見せた。
「現在の仕事。」
スマホに写し出されているのはよく見かける広告。テレビで結構取り上げられててそりゃ話題やから俺も知ってる。
「これ？」
「そう、このセットを僕が作ったん。」
「まじ？はぁ？」
スマホ奪い取って画像を食い入るように見ていると「はは、運が良かったん。」なんて言うねん。
「運が良くてできるもん？」
「結構プレゼンで必死に訴えたんよ。僕ならこんなセットできますとか必死に。ＭＪさんと一騎打ちでさ。」
「えぇ、ＭＪ？まじで？」
「あそこに勝てへんと思ったんやけど、今回の撮影者が女性で僕の方を選んでくれたん。乙女心を選
んでくれたんかな。」
うっとりして言われても俺的にどう答えたらええねん？
「大倉も分かるだろ？」
「どう分かれって言うねん。」
「かわいいもの好き同好会やん。」
「いつからそんな同好会作ったん？」
「僕と大倉で酒飲みながら。」
コイツの思考回路たまに謎になるんやけど。
「もう、覚えてへんってあかんで？で、この仕事のお陰で女性誌のお声かけ頂いてますぅ。」
にんまり笑って言うけどさ、見た目はかわいいの好きそうに見えないって。雪駄穿いて、短パンにそのTシャツにおまけにモヒカンと髭で言われてもどこ見てもかわいいもの好きって見えへん、怪しい人やって。
「そのスタイルで言う？」
「意外とこれで覚えてもらってな。最近はクラッシック人形の服について専門職の人と話したんよ。」
「またマニアックな話。」
「あの時代にポリのレースはないから綿レースで作らないとほんまやないって言う。」
「ヤスの頭の中分からへん。」
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2021年3月23日 16時
