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窓口担当は営業時間、店から出ることはほぼない。
あっても、御迷惑のお詫びとか、緊急を要する出来事以外は。
渉外がお客様の御用聞きとしておるんやもん。
俺の立場は窓口であって営業やない。
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営業なんてしたくない。
営業室に入りたくない。
なのに、俺はこの営業室、打ち合わせのテーブルで作業をしている。
「最低。」
思わずつぶやいた言葉に目ざとい人は言うんよね。「ミスして追い出された奴が堂々といるって。」わざと俺に聞こえるような声で。
俺に対していい感情を持っている人なんて営業室におらんのは重々承知しておるし、俺が一番会いたくない人もおってさっさとここから出たいんやけど。
紙コップが近くに置かれ申し訳なさそうにおったのは倉田さんだった。
「珈琲大丈夫ですか？ブラックですけど。」
「助かります。」
「大倉さん、元……営業だったんですね。」
急に言われた言葉に「入社して2年目の話ね。」なんて言うと倉田さんは少しだけ困った顔をして俺を
見てくる。
「今日の情報を入力したら自分の場所戻るからそれまで先輩達がむっちゃ文句言うと思うから気にせんで。」
申し訳なさそうに頭を下げて倉田さんが事務の席に戻るのを見て俺はため息をしてからパソコン画面を見つめてから紙コップを手に取って口に入れる。
時計を見れば窓口の締め業務の時間になりだしているしさっさとこの作業を終わらせたいんやけど、こういう時に限って時間がかかるんよね。
「先方のお怒りは収まったの？」
いつの間にか戻ってきた有田が目の前の席に座ってスマホを弄り、マイカップまでわざわざ持ってきて話す気満々でおるってうらやましい限りで。
「おさまってへんで。」
「なんで？」
「さぁ、担当さんがなにしたか知らんけど。個人宅に行くんやと思ったら先方さん会社経営者やん。」
「え？そうなの？」
「窓口来た時はそんな素振り見せへんから個人さんと勝手に思っていたらちゃうねん。うちの銀行と会社のお付き合いもあったらしくて……あとは担当さんに聞いてや。」
「とことんついてないね、大倉。」
「俺は営業の仕事と相性が悪いんやって。」
「どこまで記録残せって？」
「窓口怒鳴り込んできたときから。」
「……最悪。」
「ほんま、最悪。」
「今度ラーメンおごってあげる。」
「慰めですかね、それ。」
「同期として。」
「涙止まらへんは、その優しさ。」
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2021年1月18日 20時
