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「そうやって人は成長するん。」
「なに、先生みたいなこと言うてるん。」
「やて、大倉は経験少ないやん。」
「少ないって言うんか？」
「少ないだろ。」
「ヤスが多すぎなんちゃうの？」
あほみたいな言い合いするのも俺にとっては大事やと思う。
経験が少ないんじゃない。
人と違いすぎるん。
マトモという言葉があるなら俺はマトモじゃないという事。
店を出て大通りを歩きながらすば るくんのアパートに向かって歩いていく。
「さむっ。」
3月も半ばになりかけているのにこの寒さはおかしくね？
足取り重くなるのは寒さだけ？
ちゃう……
信号待ちの人混みの中で気づいたからかもしれない。
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すれ違っても気づくことないのは話に夢中になっているから？
それとも、俺という存在は相手にとってちっぽけなものなの？
どっちでも構わへん。
振り返って二人並んで歩いているのを見送っていく。
こんな雑踏の中でも気づく自分が嫌になる。
苦しいな、ほんまに
胸元を少し押さえて息を吐き出す。
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苦しい
苦しすぎてどうすればいいん？
こんな悩みなんていらない
恋もいらない
愛もいらない
通常運転できるような心に戻れ
頼む……
頼みます……
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「忠義、痩せてね？」
急に言われた言葉に俺は「は？」なんて返事をすると喉で笑ってから頭をくしゃくしゃって撫でられた。
「食ってるん？」
「食ってますよ。1日4食。」
「それは食いすぎや。」
きっぱり言われた言葉に「やっぱり？」なんて返事を返す。珍しく眼鏡をかけて仕事モードでパソコンを見ているすば るくん。珍しく定時に帰ってきて飯まで準備してくれて何があったかと思ったら俺の痩せてる問題で作ったんか。
むっちゃ飯食ってるし、むっちゃトイレもそれなりに。
快調なのはいいことだと思ってるんやけどな。
「何読んでる？」
TVを余りつけないこの場所で音楽と読書とネットがメインになる。今の俺は読書を選択していて、本屋の紙カバーがかかった分厚い本を眺めていた。
「歴史の本。」
「エ〇小説ちゃうんか。」
「……さすがにその手は。」
「ええぞ、たまに読むと。」
「相手おってそれ言う？」
「言うで。」
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2020年11月17日 16時
