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少しむっとした彼の言葉に僕は少しだけ笑って言う。
「きっとあなたの方が僕よりいい生き方をしている。」
「え……あんないい屋敷に住んでいたのに？」
「それは僕でなく叔父です。東にいたと話したでしょう？僕は……人質として生きていた人間です。役に立たなくなれば斬られて終わるのが政(まつりごと)の世界です。」
「そんな……」
「人質の仕事を終えて僕は都に戻ったら疫病が流行り、あっけないもの。」
傍にある砂を手にとり零れ落ちていくのは僕の虚しい人生を表している気がする。
「今から俺と逃げたらええ。」
急に言われた言葉に僕はつい笑ってしまう。
「笑いごとちゃうで、本気で言うたのに。」
「ありがとう。みんなが僕ら一族を嫌っているのにそんな優しい言葉をもらったのは初めてかもしれない。」
砂が全て落ち僕は手に残った砂を払ってから彼を見て言う。
「最後に名前を聞いていいですか？」
「名前？」
「そう。」
彼は少し考えてから僕に告げた。
「忠義。」
「ええ名前ですね。」
「そ、そう言うあんたは？」
「僕は隆平って言います。」
「へぇ……」
少し笑って反応する彼に僕は胸元に会った小さな短刀を渡す。
「な、なんだよ。」
「金に困ったら売ればいい。」
「え……」
「家紋は入ってないので怪しまれません。僕の印だけ入ってますから。」
「隆平の？」
「えぇ、沙羅双樹。」
「なにその……さら？」
「沙羅双樹。この場所にはないのかな、こんな花です。」
柄(つか)の部分に描かれたその花紋を見せると「椿みたいやな。」なんて笑って言う。
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瀬奈(プロフ) - ミムラ様コメントありがとうございます。月詠記はあのまま置くのが一番と思い置かせていただきます。こちらは新たに書き足して進めていきますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2020年6月13日 16時) (
レス) id: d70537b0b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミムラ(プロフ) - よかったです。世界観、書き表し方とても好きです。何度も読み返してます。消さないでほしいです。次も楽しみにしています。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 39731cc6b3 (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - kkoyanagi様 コメントありがとうございます。前のお話をもっともっと向き合いたくて、まずは最初から書いてます。ゆっくりあのお話に繋げていきますのでお待ちくださいね。 (2020年3月9日 20時) (レス) id: d24f83f6f0 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - 良かった、前のお話凄く気になっててどうなるんかなぁって心配でした。有り難うございますゆっくり待ちます。 (2020年3月9日 7時) (レス) id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2020年3月3日 18時
