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甘い香りは砂糖菓子の香り




フルーツの香りが重なって相当なカロリーと思えてしまうけど、世が世なだけに低カロリーだったりするわけで。






今朝入荷したいちじくを飾りブルベーリーをアクセントにすれば店で人気の季節のタルトが完成する。






「このクリームが2層になっている秘密ってあるんです?」




中島がカットして見える部分を質問してくるから俺は首を傾げて素直に答えた。





「舌の感触。」




「え?」




「一口入れた時にタルトの生地と1層目で結構な重さは来るから2層目は軽くしてフルーツの触感を
感じるようにしている。」





「細かい……」






「そうかもね。でも、味わってほしいでしょ?いちじくも季節ものだから即終わっちゃうし。限定
ものってそう言う運命だから。」






中島は初めての店だって話をチーフから聞いた。





修行もあちこち行く人もいれば1軒で長くいる人もいたりして人によってさまざま。






渡り歩く人は自分の求めているのを探しているのか?居心地のいい場所を探しているか?もしくは飽き性の人。いずれかだって話をよく聞く。





俺はどう思われている?





専門卒業してここで3軒目は早いのか遅いのか……





「ザッハトルテって挑戦してみたいんだよね。」





「随分……王道と言うか、難しいの言いますね。」





中島はショーケースに置くための白い皿に置いて見栄えをよくしていく。





その合間に俺は飲食で出すフルーツケーキの準備を開始する。これもショーケースに置くけど、自分らがいなくても出せるように長方形のガラスの器に入れて取りやすいように作っていく。





「売れないと思うけどね。」



「そうですかね?」




「ザッハトルテって簡単に言えばチョコケーキだけど有名な店のだと食す前の手間暇がむっちゃめんどくさいやん。それをさせたい。」




「……はい?」




「簡単に食わせたくない。」




「大倉さん、我儘ですね。」




「それくらい味わって食えって思うじゃん。クソ甘いチョコケーキを味わう儀式をさせたいわ
け。」





「そりゃ、店長OKしませんよ。」




「店に出すのも大変だからOKしないって。」




下準備を終え、ボールを流しに入れてから中島にこの先工程を説明しながら作業をしていく。




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作者名:瀬奈 | 作成日時:2019年12月3日 18時

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