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「なんて言うか、仕事場でも明るかったし、今みたいに慎重な性格ではなかったから大胆な事を言っ
たりしてさ。だから総務に抜擢されたんだって思う。同じ営業にいたのに、あの瞬間で僕とマルの距離は出来たって思ったし。」
「今でも言われますよ部長に。『あのひらめきはどこ行った』なんて。」
「慎重ではなかったわけではないけど……あの時のマルは生き生きしていた。」
「今はダメって言うてます？」
「少しね。」
「章ちゃんの意地悪。」
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「でも、あの時期のマルが本来の姿だったんじゃないかって……」
急に言われた言葉に僕は黙って章ちゃんを見てしまう。
人の顔色を見て生きていくのを覚えたのは親の離婚と再婚の繰り返しのせいだって分かっている。
気が付けば、血のつながりが全くない親が今の僕の両親。
顔色を伺って生きていた中学までと違って、やっと笑えるようになったのは今の親の元で高校に通わせてもらったから出来る事。
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「明るい僕か。」
なんて呟くように口にしてしまうけど、同じ自分なのにイメージがわかない。
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「でも、章ちゃん。」
「ん？」
「なんで僕が男の人とって？」
素朴な質問を投げかけると章ちゃんはにんまり笑って僕に言う。
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「やて、僕はそっち系だもん。」
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数秒の間の後に僕はポカーンと見つめてしまう。
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「分からんかった？」
「奈々とむっちゃ仲良しさんで付き合っているんやってずっと思ってた。」
「奈々も同じなの。」
「奈々も？」
あかん、頭が混乱。
「このご時世どんな恋愛もOKな世界やで？奈々は愛しの彼女がいてその手で僕に相談してくる。僕は
営業上どうしてもそっち系だと厄介だからカモフラージュで助けてもらう。むっちゃWIN-WINの関係でおるんやって。」
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「WIN-WINって。」
「そうやで？ホテル一緒に入るの見られても奈々は彼女と待ち合わせで、僕はその日会う人との待ち合わせ。もう、問題ないやん。」
そう言うもん？
いや、混乱や
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2019年12月3日 18時
