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総務部長が忙しくて僕が代打で参加することになったのはええんですけど、こういう空間はどうも慣れへん。ゆうちんは何度も櫻井部長と話し込んでいて、僕は煙草を吸いながらタブレットで書類のチェックをしていく。
社長直々にこっちに来て会いたいって言われたらそりゃ大騒ぎよな営業は。
関西エリアでは名の知れた大きな会社さんから出向いてくるなんて大きな話を期待するに決まってるし。
「先方は社長含めて4人で対面と聞いてます。」
里田さんはそう言って頷くと僕は「4人か。」なんて呟いてしまう。
営業3人、総務の僕で4人だけど向こうは社長と専務と後は誰?
「里田さんも緊張している?」
「私は、会話をどこまで記録できるか。非常に緊張しています。」
女子1人で緊張の中で記録係とは大変そう。
「丸山主任はこういう店は?」
「来るわけないでしょ。居酒屋と和食とか多いのにこういう場所はちょっとねぇ。」
「これは接待レベルですか?」
「接待と言うか茶話会かな。」
急に櫻井部長が部屋を出ていくとそろそろ開始ってことなのがすぐに分かった。僕は煙草を揉み消してからポケットにいているミントタブレットを口に1粒入れ準備した。
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個室に入って僕は声が出そうになる。
「どうした?」
「い、いえ。」
眼鏡のブリッジを上げて一度頷くと、視線先にいる人は冷ややかな目で僕を見てくる。
覚えてない時期を知っている人がここにいると言う不思議な状況。
でも、彼はCALVAにいた人。
なんでここに?
あの時はものすごいラフな姿でいて……
なのに今ここにいる。
スーツも靴もその辺で売っている感じでない、彼に合わせて作られたものだって素人目でもわかる。
席の配列で目の前にいるのが彼で僕は少し視線をずらして専務の方に向けるようにしようと思った。
相手側は社長と専務だけでなく、何度か顔を合わせたことある人が3人と彼、合計6人。お互いの会社で用意した資料を渡してから出席者の名前を見ながら名前を告げる。
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作者名:瀬奈 | 作成日時:2019年12月3日 18時